「去年に似るべくもあらず」の現代語訳・口語訳・意味・品詞分解・敬意の向き
原文
またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を
恋ひて、行きて、立ちて見、ゐて見、見れど、去年に
似るべくもあらず。
現代語訳・口語訳・意味
翌年の正月に、梅の花が満開になる頃、(男は)去年のことをなつかしく思って、(女が引っ越すまで住んでいた所に)行って、立ちながら見て、座りながら見て、さらに見るのですが、
去年(女が住んでいたときの様子)とは似るはずもありません。
品詞分解
| 単語 | 品詞 | 敬意の向き |
| 去年(こぞ) | 名詞 | ー |
| に | 格助詞 | ー |
| 似る | ナ行上一段活用「にる」の終止形 | ー |
| べく | 当然の助動詞「べし」の連用形 | ー |
| も | 係助詞 | ー |
| あら | ラ行変格活用「あり」の未然形 | ー |
| ず。 | 打消の助動詞「ず」の終止形 | ー |
主な出典
【伊勢物語「月やあらぬ」】
昔、東の五条に大后の宮おはしましける西の対に、住む人ありけり。それを、本意にはあらで、こころざし深かりける人、行きとぶらひけるを、正月の十日ばかりのほどに、ほかに隠れにけり。あり所は聞けど、人の行き通ふべき所にもあらざりければ、なほ憂しと思ひつつなむありける。またの年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋ひて、行きて、立ちて見、ゐて見、見れど、去年に似るべくもあらず。うち泣きて、あばらなる板敷に、月の傾くまで伏せりて、去年を思ひ出でて詠める。「月やあらぬ春や昔の春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして」と詠みて、夜のほのぼのと明くるに、泣く泣く帰りにけり。