百人一首(96)入道前太政大臣/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
花誘ふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
花誘ふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(掛詞・縁語句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
新勅撰和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
花誘ふ 嵐の庭の 雪ならで (※1)ふりゆくものは わが身なりけり
ひらがなでの読み方
はなさそふ あらしのにはの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり
現代語訳
桜の花をさらっていく嵐が吹く庭では、(桜の花びらが舞って)雪のようではあるが、降っているのは(雪ではなくて)年老いた私の身であることよ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての公卿・歌人、
西園寺公経(さいおんじきんつね)です。百人一首では
入道前太政大臣(にゅうどうさきのだいじょうだいじん)と表記されます。承久の乱の後、朝廷や鎌倉幕府と太いパイプを持ち、太政大臣にまでのぼりつめた人物です。
歌の前半では、桜の花びらが風に誘われて舞いっている情景を詠みとても華やかな印象を与えます。一方後半になると、(桜の花を雪に見立てて)「降っている」のではなく、(自分の体が衰えていることを指して)「旧っている」のだと調が一転します。その対比が非常に見事です。
主な技法・単語・文法解説
■(※1)掛詞
「掛詞」とは、ひとつの言葉に2つ以上の意味を重ねて表現内容を豊かにする技法のこと。この歌では「ふり」が、(雪などが)「
降る」と年を取るを表す「
旧る」の掛詞。
■(※1)縁語
「ふる」、「花」、「ゆき」が縁語。
※「縁語(えんご)」とは、和歌の修辞技法のひとつ。ひとつの和歌にある言葉と、意味や音声の上で関連のある言葉を用いて表現に幅をもたせる技法。
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
花 | ー |
誘ふ | ハ行四段活用「さそふ」の連体形 |
嵐 | ー |
の | 格助詞 |
庭 | ー |
の | 格助詞 |
雪 | ー |
なら | 断定の助動詞「なり」の未然形 |
で | 接続助詞 |
ふりゆく | カ行四段活用「ふりゆく」の連体形 |
もの | ー |
は | 係助詞 |
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
身 | ー |
なり | 断定の助動詞「なり」の連用形 |
けり | 詠嘆の助動詞「けり」の終止形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。