百人一首(68)三条院/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に後拾遺和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
(※1)心にも あらで憂き世に ながらへば 恋しかるべき (※2)夜半の月かな
ひらがなでの読み方
こころにも あらでうきよに ながらへば こひしかるべき よはのつきかな
現代語訳
不本意ながら、このつらい世の中で生きながらえるのであれば、(そのときはきっと)懐かしいに違いない、(この宮中から眺める)夜中の月(の美しさ)であることよ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、第67代天皇の
三条天皇(さんじょうてんのう)です。百人一首には
三条院(さんじょういん)として収録されています。
詞書によると、退位の1か月前に詠んだ歌とされています。三条天皇は目の病気を抱えていました。また、三条天皇と藤原道長の関係があまりよく、目の病気を理由に道長からしきりに退位をせまられていました。
退位の決意をしたころ、ふと夜空を見上げると美しい月が出ています。宮中から去るため、この場所から同じ月を眺めることはもうできないだろう、そして、仮に生きながらえたとしても、病気のために失明し月を見ることもできなくなってしまうのだろう、そんなはかなさを含んだ歌です。
主な技法・単語・文法解説
■単語・文法解説
(※1)心にもあらで | 連語。「心にもあらず」で「不本意にも」と訳す |
(※2)夜半の月 | 夜中の月 |
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
心 | ー |
に | 断定の助動詞「なり」の連用形 |
も | 係助詞 |
あら | ラ行変格活用「あり」の未然形・補助動詞 |
で | 接続助詞 |
憂き世 | ー |
に | 格助詞 |
ながらへ | ハ行下二段活用「ながらふ」の未然形 |
ば | 接続助詞 |
恋しかる | シク活用の形容詞「こひし」の連体形 |
べき | 当然の助動詞「べし」の連体形 |
夜半の月 | ー |
かな | 詠嘆の終助詞 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。