百人一首(31)坂上是則/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(歌枕・体言止め、句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
(※1)朝ぼらけ (※2)有明の月と 見るまでに (※3)吉野の里に 降れる(※4)白雪
ひらがなでの読み方
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
現代語訳
ほのぼのと明るくなる頃、有明けの月かと見て思うほどに、吉野の里に降り積もっている白雪であることよ。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、三十六歌仙の一人、
坂上是則(さかのうえ の これのり)です。
三十六歌仙の一人としても知られています。坂上田村麻呂の子孫ともいわれています。
吉野に出向いて行ったときに目にした、辺り一面の銀世界から発せられる雪明りを、有明の月に見立てて詠んだ歌です。中国の詩人
李白が詠んだ
静夜思(静夜の思ひ)に
牀 前 看 月 光
寝床にさしこむ月の光をみて
疑 是 地 上 霜
(あまりにも明るいので)地上に降りた霜かと疑うほどだ
とあるように、月の白い光を雪や霜に見立てるの技法は中国の漢詩によく見られます。しかしこの歌はその逆で、雪明りから月光を連想している点に新しさがあります。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)朝ぼらけ | 朝ほのぼのと明るくなるころ |
(※2)有明の月 | 夜が明けても空に残っている月 |
(※3)吉野 | 現在の奈良県吉野郡の吉野周辺。桜の名所として知られるが、古今和歌集では雪とともに詠まれることが多い |
■(※3)歌枕
「吉野」が歌枕。歌に詠み込まれている名所のことを歌枕という。以下に例を記す。
【逢坂の関】
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
【生駒山】
君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
■(※4)技法
体言止め。和歌を名詞(体言)で締めくくる技法をいう。
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
朝ぼらけ | ー |
有明の月 | ー |
と | 格助詞 |
見る | マ行上一段「見る」の連体形 |
まで | 副助詞 |
に | 格助詞 |
吉野 | ー |
の | 格助詞 |
里 | ー |
に | 格助詞 |
降れ | ラ行四段活用「ふる」の已然形 |
る | 存続の助動詞「り」の連体形 |
白雪 | ー(体言止め) |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。