李白『静夜思』の原文・現代語訳と絶句・押韻・対句の有無などを徹底解説
このテキストでは、中国の詩人、
李白が詠んだ漢詩「
静夜の思ひ」の原文(白文)、書き下し文、そしてわかりやすい現代語訳・口語訳、文法解説(五言絶句・押韻・対句の有無など)を記しています。
原文
※左から右に読んでください。
牀 前 看 月 光
疑 是 地 上 霜
挙 頭 望 山 月
低 頭 思 故 郷
書き下し文
牀前月光を看る
疑ふらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思ふ
現代語訳(口語訳)
寝床にさしこむ月の光をみて
(あまりにも明るいので)地上に降りた霜かと疑うほどだ
頭を挙げて山に出た月をながめていると
頭が次第に下がってきて、(気づくと)故郷のことを思っている
■形式:五言絶句
4つの句からなる詩を
絶句(ぜっく)といい、8つの句からなる詩を
律詩(りっし)といいます。この漢詩では「牀前看月光」を1句と考えます。静夜思は4つの句からなるので絶句です。
また、絶句のうち1つの句が5文字からなるものを
五言絶句(ごごんぜっく)といい、1つの句が7字からなるもの
七言絶句(しちごんぜっく)といいます。
以上から、静夜思は「
五言絶句」となります。
■押韻:光・霜・郷
押韻(おういん)とは、漢詩を読んだ時に一定のリズムが出るように、同じ響きの言葉を句の最後に置くことです。例えばこの静夜思では、
光(Ko)、霜(So)、郷(Kyo)
が該当します。カッコの中は日本語の音読みです。だいたいが日本語の音読みで判別することができますが、本来は、作者が生きた時代の発音で韻を踏んでいるかどうかを確認します。よって、日本語の音読みだけでは判別ができない押韻も存在します。
押韻にはルールがあります。
五言絶句では、原則として第2句末と第4句末に同じ響きの言葉が置かれます。この静夜思は例外で、第1句末、第2句末そして第4句末が押韻となっているので注意しましょう。
■対句
対句とは、句を強調するために、形や語感が似たペアの句を作る技法です。ペアとなる句は、文法構造や用いている文字が呼応しているなどの特徴があります。静夜思は、「第3句と第4句」が対句となっています。
■第3句と第4句
挙 頭 望 山 月
低 頭 思 故 郷
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『静夜思(静夜の思ひ)』テストで出題されそうな問題
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著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。