はじめに
このテキストでは、古今和歌集や
古今著聞集などに収録されている歌「
春霞かすみていにしかりがねは今ぞ鳴くなる秋霧のうへに」の原文、現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。
原文
春霞かすみて
いにしかりがねは今ぞ鳴くなる秋霧のうへに
ひらがなでの読み方
はるがすみ かすみていにし かりがねは いまぞなくなる あきぎりのうへに
現代語訳
春霞の中にかすんで飛び去った雁は、今は秋霧の中で鳴いている
解説
古今和歌集には、「題しらず、よみ人しらず」とされていますが、古今著聞集には、次のように記されています。
寛平の歌合せのとき、「初雁」を題材にした歌を詠むこととなった紀友則が、「春霞〜」と詠み始めると、反対側の席から笑い声があがりました。これは「初雁」が秋の題材であり、「春霞」という言葉が季節にそぐわないと早とちりをしたからでした。しかし二句目以下を詠んだあとにはその笑い声もなくりました。
品詞分解
※名詞は省略しています。
春霞 | 枕詞 |
かすみ | マ行四段活用「かすむ」の連用形 |
て | 接続助詞 |
いに | ナ行変格活用「いぬ」連用形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
かりがね | ー |
は | 係助詞 |
今 | ー |
ぞ | 係助詞 |
鳴く | カ行四段活用「なく」の終止形 |
なる | 推定の助動詞「なり」の連体形 |
秋霧 | ー |
の | 格助詞 |
上 | ー |
に | 格助詞 |