ものから
このテキストでは、古文単語「
ものから」の意味、解説とその使用例を記している。
成り立ち
形式名詞「もの」に格助詞「から」がついて一語になったもの。
接続助詞
■意味1:逆接の確定条件
〜けれども、〜のに。
[出典]:箒木 源氏物語
「月は有り明けにて、光をさまれるものから、影さやかに見えて...」
[訳]:月は有明けの月(夜が明けても空に残っている月)で、光はなくなっているのに、(月の)影ははっきりと見えて...
■意味2:順接の確定条件
〜ので、〜だから。
[出典]:
漂泊の思ひ・旅立ち 奥の細道
「弥生も末の七日、あけぼのの空朧々として、月は有明にて光をさまれる
ものから、不二の峰かすかに見えて...」
[訳]:三月も下旬の二十七日、夜明けの空はぼんやりとかすみ、月は有明けの月(夜が明けても空に残っている月)で(※1)光はなくなっている
ので、富士の峰がかすかに見えて...
意味1と意味2の例文を読み比べると松尾芭蕉が源氏物語を意識しているのは明らかで、それに鑑みて「(※1)光はなくなっている
のに」と逆接で捉える説もある。
備考
もともとは「逆接の確定条件」の用法で用いられていた。「順接の確定条件」の用法は鎌倉時代以降に現れ、江戸時代以降では「順接の確定条件」の用法が主流。