なす/為す/成す
このテキストでは、サ行四段活用の動詞「
なす/為す/成す」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「なす」には
①為す/成す
②
寝す
③生す
などの用法があるが、ここでは「①為す/成す」を扱う。
サ行四段活用
未然形 | なさ |
連用形 | なし |
終止形 | なす |
連体形 | なす |
已然形 | なせ |
命令形 | なせ |
■意味1:他動詞
行う、する。
[出典]:
今日はそのことをなさんと思へど 徒然草
「今日はその事を
なさんと思へど、あらぬ急ぎ先づ出で来て紛れ暮し...」
[訳]:今日はそのことを
しようと思うのだが、思いもよらない急用が先にできて(それに)気を取られて一日を過ごし...
■意味2:他動詞
作る、こしらえる。
[出典]:大進生晶が家に 枕草子
「ひんがしの門は四つ足になして...」
[訳]:東の門は四つ足にこしらえて...
■意味3:他動詞
用いる、代用する。
[出典]:万葉集
「高山を隔てになして、沖つ藻を枕になし...」
[訳]:高い山を壁として用いて、沖の藻を枕として用いて...
■意味4:他動詞
任命する、就任させる。
[出典]:
二月つごもりごろに 枕草子
「俊賢の宰相など、『なほ内侍に奏して
なさむ。』となむ、定め給ひし。」
[訳]:俊賢の宰相などが、『やはり(清少納言を)内侍に(採用するよう)と天皇に申し上げて
任命しよう。』とお決めになられました。」
■意味5:他動詞
他のものに変える、〜にする、〜にならせる。
[出典]:
ある者、子を法師になして 枕草子
「ある者、子を法師に
なして...」
[訳]:ある人が、子どもを法師
にして...
■意味6:補助動詞
わざわざ〜する、特に〜する、そのように〜する。
※この用法の場合、動詞の連用形について用いられる。
[出典]:
神無月のころ 徒然草
「はるかなる苔の細道を踏み分けて、心細く住み
なしたる庵あり。」
[訳]:遠くまで続いている苔の細道を踏み分けて、もの寂しい状態で
わざわざ住んでいる草庵があります。