『杜子春伝』
ここでは中国の小説集「続玄怪録」の中の『杜子春伝』の「有一老人策杖於前〜」から始まる部分の書き下し文、現代語訳とその解説を行っています。
前回のテキスト
白文(原文)
有一老人策杖於前。
問曰、
「君子何嘆。」
春言其心、且憤其親戚之
疎薄也、
感激之気、発於顔色。
老人曰、
「幾緡則豊用。」
子春曰、
「三五萬、則可以活矣。」
老人曰、
「未也。」
更言之、
「十萬。」
曰、
「未也。」
乃言、
「百萬。」
亦曰、
「未也。」
曰、
「三百萬。」
乃曰、
「可矣。」
於是袖出一緡曰、
「給子。今夕、明日午時、候子於西市波斯邸。
慎無後期。」
及時、子春往。
老人
果与錢三百萬、不告姓名而去。
書き下し文
一老人の杖を前に策(つえつ)く有り。
問ひて曰はく、
「君子何をか嘆く。」と。
春其の心を言ひ、且つ其の親戚の疎薄なるを憤るや、感激の気、顏色に発す。
老人曰はく、
「幾緡(いくびん)ならば則ち用に豊(た)るか。」と。
子春曰はく、
「三、五万ならば則ち以て活(い)くべし。」と。
老人曰はく、
「未だしなり。」と。
更に之を言ふ、
「十万。」と。
曰はく、
「未だしなり。」と。
乃ち言ふ、
「百万。」と。
亦た曰はく、
「未だしなり。」と。
曰はく、
「三百万。」と。
乃ち曰はく、
「可なり。」と。
是(ここ)に於いて袖より一緡(びん)を出(い)だして曰はく、
「子の給(あた)へん。今は夕べなり、明日の午時、子を西市の波斯邸(はしてい)に候(ま)たん。
慎みて期に後(おく)るること無かれ。」と。
時に及びて、子春往く。
老人果たして銭三百万を与へ、姓名を告げずして去る。
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