竹取物語『かぐや姫の昇天』
このテキストでは、
竹取物語の一節"
かぐや姫の昇天"の「かかるほどに、宵うち過ぎて、〜」から始まる部分のわかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。書籍によっては『天の羽衣』と題するものもあるようです。
※竹取物語は、平安時代初期に成立したとされる物語です。正確な成立年や作者は未詳です。
原文(本文)
かかるほどに、宵
うち過ぎて、
(※1)子の時ばかりに、家のあたり、昼の明かさにも
過ぎて光りたり。
望月の明かさを十
合わせたるばかりにて、
ある人の毛の穴さへ
見ゆるほどなり。大空より、人、雲に乗りて下り来て、土より五尺ばかり
上がりたるほどに
立ち連ねたり。内外なる人の心ども、物に
おそはるるやうにて、あひ
戦はむ心も
なかりけり。
からうじて思ひ起こして、弓矢を
取り立てむとすれども、手に力もなくなりて、
なえかかりたる中に、
(※2)心さかしき者、
(※3)念じて
射むとすれども、
ほかざまへ行きければ、
荒れも戦はで、心地ただ
(※4)痴れに痴れて、
(※5)まもりあへり。
※つづき:
「立てる人どもは~」
現代語訳(口語訳)
こうしているうちに、宵を過ぎて、午前0時ごろになると、家の周辺が、昼のときの明るさ以上に光りました。(それは、)満月を10こ合わせたほど(の明るさ)で、(その場に)居合わせた人の毛穴まで見えるほどでした。
大空から人が、雲に乗って降りてきて、地面から5尺ほど上がったところで(浮かび)立ち並んでいます。家の中にいる人たち、外にいる人たちの心は、物怪に襲われたようで、戦おうという心もありませんでした。やっとのことで心を奮い立たせて、弓矢を用意しようとするのですが、手に力もなくなって、ぐったりとして物によりかかっていいます。(その)中で、気が強い者は、我慢して矢を射ようとしますが、よその方にいったので、激しく戦うこともしないで、心がすっかりぼんやりとして、顔を見合わせていました。
※つづき:
「立てる人どもは~」の現代語訳
品詞分解
※品詞分解:
『かぐや姫の昇天(かかるほどに、宵うち過ぎて~)』の品詞分解(敬語・助動詞など)
単語・文法解説
(※1)子の時 | 「子」は午前0時ごろを指す言葉 |
(※2)心賢しき | 形容詞「心賢し」の連体形。気が強い、気丈である |
(※3)念じ | サ行変格活用「念ず」の連用形。我慢する |
(※4)痴れ | ラ行下二段活用「痴る」の連用形。心がぼんやりとする |
(※5)まもりあへり | 「見つめ合う」の意味。ラ行四段活用「まもる」の連用形「まもり」+ハ行四段活用「あふ」の命令形「あへ」+存続の助動詞「り」の終止形「り」 |