『心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ』現代語訳と解説
このテキストでは、
新古今和歌集に収録されている歌「
心なき身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。
新古今和歌集とは
新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)は、鎌倉時代初期に編纂された勅撰和歌集(ちょくせんわかしゅう)です。勅撰和歌集とは、天皇や上皇の命令により編集された和歌集のことです。
原文
心なき身にも
あはれは
知られけり 鴫立つ沢の秋の夕暮れ
現代語訳
(俗世間から離れた私のような)趣を理解しない身であっても、しみじみとした趣は自然と感じられるものだなあ。鴫(しぎ)が飛び立つ沢の夕暮れよ。
解説
この歌は、平安時代から鎌倉時代の僧、
西行が詠んだものです。
三句切れの歌で
体言止めの手法を用いています。
「
出家して人の感情を捨てたにもかかわらず、鴫が飛び立つ沢をみていたら、なんとも言えない感動が心にわいてきたよ」と、俗世間を捨てたはずの西行が、このように感情的な歌を詠んでいるというところがこの歌の最大のだいご味です。
単語
| 心なき身 | 出家して俗世間の感情を捨て切った僧の身、または単に趣を理解しない者。「心なき」=「心がない」として「どこか魂が脱けてしまったような人」などと訳さないように注意しましょう。 |
| あはれ | 悲しみや人を憐れむ気持ちではなく、心に染みる感動 |
| 鴫立つ沢 | 鴫(しぎ)とは鳥の一種で、鴫立つ沢とは、鴫が飛びだって行く小川のこと |
品詞分解
※名詞は省略しています。
| 心なき | 形容詞・ク活用「こころなし」の連体形 |
| 身 | ー |
| に | 格助詞 |
| も | 係助詞 |
| あはれ | ー |
| は | 係助詞 |
| 知ら | ラ行四段活用「しる」の未然形 |
| れ | 自発の助動詞「る」の連用形 |
| けり | 詠嘆の助動詞「けり」の終止形 |
| 鴫 | ー |
| 立つ | タ行四段活用「たつ」の連体形 |
| 沢 | ー |
| の | 格助詞 |
| 秋 | ー |
| の | 格助詞 |
| 夕暮れ | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。