こころなし/心無し
このテキストでは、ク活用の形容詞「
こころなし/心無し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「こころなし」には
①形容詞ク活用
②名詞
の用法がある。
①形容詞・ク活用
未然形 | こころなく | こころなから |
連用形 | こころなく | こころなかり |
終止形 | こころなし | ◯ |
連体形 | こころなき | こころなかる |
已然形 | こころなけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | こころなかれ |
■意味1
趣を理解しない、教養がない。
[出典]:
新古今和歌集
「
心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ」
[訳]:(俗世間から離れた私のような)
趣を理解しない身であっても、しみじみとした趣は自然と感じられるものだなあ。鴫(しぎ)が飛び立つ沢の夕暮れよ。
■意味2
配慮にかける、思慮分別がない、不注意である。
[出典]:
花は盛りに 徒然草
「酒のみ、連歌して、はては、大きなる枝、
心なく折り取りぬ。」
[訳]:酒を飲んで、連歌をして遊んで、最終的には、大きな枝を、
分別もなく折り取ってしまう。
■意味3
思いやりがない、親切心がない、つれない。
[出典]:紅葉賀 源氏物語
「げにいと心なき人のしわざにもはべるなるかな。」
[訳]:本当にたいそう思いやりがない人の所業ですねえ。
②名詞
■意味
思慮分別のない人、うっかり者。
[出典]:
若紫・北山の垣間見 源氏物語
「例の、
心なしの、かかるわざをしてさいなまるるこそ、いと心づきなけれ。」
[訳]:いつもの、
うっかり者が、こんなことをして叱られるのが、本当に気に入りません。