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古文単語「かく」の意味・解説
著作名: 走るメロス
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「かく」の意味・使用例

このテキストでは、古文単語「かく」の意味、解説とその使用例を記している。

「かく」には
斯く(副詞)
(名詞)
欠く(カ行四段活用)
舁く(カ行四段活用)
駆く/駈く(カ行下二段活用)
掛く/懸く(カ行四段活用/カ行下二段活用)
掻く(カ行四段活用)
などの用法がある。

①斯く

副詞

意味

このように、こんなふうに、こう

[出典]物語 更級日記
かくのみ思ひくんじたるを、心も慰めむと...」

[訳]:(私が)このようにひたすらふさぎこんでいるので、心を慰めようと...




②格

名詞

意味1

法則、しきたり、決まり

意味2

品格、風格拡張


③欠く

カ行四段活用

意味1:他動詞

怠る、抜かす

[出典]:栄花物語
「滝口、帯刀など番欠かさず候ふ。」

[訳]:滝口、帯刀など(の侍)が当番を怠らずにしている。


意味2:他動詞

一部分を破損する、欠かす

[出典]:蜻蛉日記
「四十九日のこと、たれも、欠くことなくて、家でとり行う。」

[訳]:四十九日のこと(法事)は、誰一人も、欠かすことなく、家で執り行う。


カ行下二段活用

意味:自動詞

一部分がなくなる、破損する

[出典]これも仁和寺の法師 徒然草
「酒宴ことさめて、いかがはせむと惑ひけり。とかくすれば、首のまはり欠けて、血垂り、ただ腫れに腫れみちて、息もつまりければ...」

[訳]:宴も興ざめして、どうしたらよいだろうかとうろたえました。(抜こうと)あれこれとすると、首の周りは傷ついて、血が垂れ、ひたすら腫れに腫れ、息も詰まってきたので...




④舁く

カ行四段活用

意味:他動詞

(神輿や籠などを)
かつぐ、肩にのせて運ぶ

[出典]:道隆 大鏡
「車さし寄せつつ、人にかかれて乗り給ふを...」

[訳]:牛車を寄せさせながら、人に担がれてお乗りになるのを...



⑤駆く/駈く

カ行下二段活用

意味1:自動詞

馬に乗って走る

[出典]木曾最期 平家物語
「木曽殿は只一騎、粟津の松原へ駆け給ふが...」

[訳]:木曽殿はただ1騎で、粟津の松原へ馬に乗って走りなさるが...


意味2:自動詞

馬に乗って攻める

[出典]木曾最期 平家物語
「『昔は聞きけん物を、木曾の冠者、今は見るらむ。左馬頭兼伊予守朝日の将軍源義仲ぞや。甲斐の一条次郎とこそ聞け。たがひによきかたきぞ。義仲うって、兵衛佐にみせよや。』とて、をめいて駆く

[訳]:「昔耳にしたことがあるであろう、木曾の冠者(自分のこと)を、今は目にしていることであろうよ。(私が)左馬頭兼伊予守朝日の将軍源義仲である。(お前は)甲斐の一条次郎と聞く。お互いに(打ち合うには)いい敵だ。義仲を討ち取って、兵衛佐に見せるがよい。」と大声で叫んで馬に乗って攻めて行く




⑥掛く/懸く

カ行四段活用

意味1:他動詞

つなぎとめる、吊り下げる

意味2:他動詞

関係する、係わる

カ行下二段活用

意味1:他動詞

掛ける、ひっかける、吊り下げる

[出典]にくきもの 枕草子
「伊予簾など掛けたるに、うちかづきて、さらさらと鳴らしたるも、いとにくし。」

[訳]:伊予の国産の簾(すだれ)などが掛けてあるのを、(くぐるときにそれを)頭にのせて、さらさらと音をたてさせるのも、たいそうしゃくに障る。


意味2:他動詞

掛け渡す、両方に掛ける、二つの場所をつなぐ

[出典]春道列樹 百人一首
「山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり」

[訳]:山あいを流れる川に風が掛け渡したしがらみは、流れきれずに(そこ留まっている)紅葉であったよ。


意味3:他動詞

測り比べる

[出典]筒井筒 伊勢物語
「筒井つの 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに」

[訳]:筒井戸の井筒と背比べをした私の背は、もう井筒を越してしまったようだなあ。あなたに会わないでいるうちに。


意味4:他動詞

兼任する

[出典]:兼家 大鏡
「道綱と聞こえし、大納言までなりて、右大将かけ給へりき。」

[訳]:道綱と申し上げ、大納言にまでおなりになり、右大将を兼任なさった。


意味5:他動詞

覆いかぶせる、上からかける

[出典]:平家物語
「御衣を肩にかけて退出す。」

[訳]:御衣(ぎょい)を肩にかけて退出した。


意味6:他動詞

(湯や水などを)
注ぐ、浴びせかける

[出典]祐子内親王家紀伊 百人一首
「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ」

[訳]:評判の高い高師の浜のあだ波には、かからないようにしようと思います。袖が濡れると困りますから。そして同じように浮気者と名高いあなたに思いをかけたりはしますまい。(気まぐれの波をかけられて)波(涙)で袖が濡れると困りますから。


意味7:他動詞

火をつける

[出典]:平家物語
「館に火かけ、焼きあげて...」

[訳]:館に火をつけて、すっかり焼いて...


意味8:他動詞

(ある場所を)
目指す、目標にする、めがける

[出典]参議篁 百人一首
「わたの原 八十島かけて 漕ぎいでぬと 人には告げよ 海人の釣舟」

[訳]:大海原、(そこに浮かぶ)多くの島々を目指して漕ぎ出していったと(都の)人に告げてくれ。漁師の釣り船よ。


意味9:他動詞

思いをかける、恋しく思う、愛情を注ぐ、気にかける、待ち望む

[出典]ある者、子を法師になして 徒然草
「若きほどは諸事につけて、身をたて、大きなる道をも成じ、能をもつき、学問をもせむと、行く末久しくあらます事ども、心にはかけながら...」

[訳]:若い時には、何事においても、名をあげて、大きな道で大成し、芸も身につけて、学問をもしようと、長い将来にわたって予期する様々なことを、気にかけながらも...


意味10:他動詞

口に出す、話しかける

[出典]高名の木登り 徒然草
「降るるときに軒たけばかりになりて、『過ちすな。心して降りよ。』とことばをかけ侍りしを...」

[訳]:降りてくるときに軒の高さぐらいになって、「怪我をするな。気をつけておりなさい。」と(初めて)声をかけましたので、...


意味11:他動詞

鍵をかける、錠をおろす

[出典]:狭衣物語
「妻戸あららかにかけつる音すれば...」

[訳]:両開きの戸に荒々しく鍵をかける音がするので...


意味12:他動詞

命を託す、命など大切なものと引き換えにする

[出典]:夕顔 源氏物語
「命を懸けて、何の契りにかかる目を見るらむ。」

[訳]:命を引き換えにして、何の因縁でこのような(夕顔の死という)辛い目にあうのだろう。


意味13:他動詞

だます、罠をしかけて捕らえる

[出典]:古今六帖
「今来こむといひしばかりにかけられて...」

[訳]:(あなたが)すぐに来ようといったばかりに(私は)だまされて...


意味14:他動詞

期間にわたる、期間が続く

[出典]:須磨 源氏物語
「暁かけて月出づるころなれば...」

[訳]:夜明けから明け方にわたって月が出るころなので、...


意味15:他動詞

関係づける、かかわらせる、かこつける

[出典]:古今和歌集
「筑波山にかけて君を願ひ...」

[訳]:筑波山にかこつけて天皇(の長寿や恩恵)を願い...


意味16:他動詞

載せる、置く、乗せる

[出典]:大鏡
「御車は榻にかくな。」

[訳]:牛車は榻に載せてはいけない。


補助動詞

意味1

~しかける、~し向ける

[出典]:殿などのおはしまさで後 枕草子
「口を引き垂れて、知らぬことよとて、猿楽しかくるに...」

[訳]:口(両端)をへの字に垂れ下げて、「知らないことよ」と、悪ふざけをし向けると...


意味2

途中まで~する、~しかける

[出典]:若菜下 源氏物語
「琵琶うち置きて、ただけしきばかり弾きかけて...」

[訳]:琵琶を置いて、ただちょっとだけ弾きかけて...




⑦掻く

カ行四段活用

意味1:他動詞

ひっかく、かきむしる

[出典]:万葉集
「眉根かき鼻ひ...」

[訳]:眉をひっかきくしゃみをして...


意味2:他動詞

(くしで髪を)
すく

[出典]:須磨 源氏物語
「御鬢かき給ふとて、鏡台に寄りたまへるに...」

[訳]:髪をおすきになるということで、鏡台にお寄りになったところ...


意味3:他動詞

(刀などの刃物で)
切り取る、削り取る

[出典]:敦盛最期 平家物語
「取って押さへて頸をかかんと甲を押し...」

[訳]:取り押さえて首を切り取ろうと兜を押し上げて...


意味4:他動詞

払いのける、手で払う

[出典]うつくしきもの 枕草子
「頭は尼そぎなるちごの、目に髪のおほへるをかきはやらで、うちかたぶきてものなど見たるも、うつくし。」

[訳]:髪型を尼のように肩の高さで切りそろえた髪型である子どもが、目に髪がかぶさっているのを払いのけることもしないで、首をかしげて何かを見ているのなども、かわいらしい。


意味5:他動詞

(食べ物を)
急いで食べる、かきこむ

[出典]:猫間 平家物語
「猫殿...かき給へ。」

[訳]:猫殿...かきこみください。


意味6:他動詞

弦楽器を弾く

[出典]:若菜上 源氏物語
「かき合はせたまはむ御琴の音も...」

[訳]:合奏なさるお琴の音色も...


意味7:他動詞

とりすがる


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