百人一首(95)前大僧正慈円/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
おほけなく 憂き世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
おほけなく憂き世の民におほふかなわが立つ杣に墨染の袖」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(縁語、掛詞、句切れなど)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
千載和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
おほけなく 憂き世の民に おほふかな (※1)わが立つ杣に (※2)すみぞめの袖
ひらがなでの読み方
おほけなく うきよのたみに おほふかな わがたつつそまに すみぞめのそで
現代語訳
身の程知らずにもこの世の人々に(仏の加護を祈って)覆いかけることであるよ。比叡山に住み始めた(私)の墨染の(衣の)袖を。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代後期から鎌倉時代初期にかけての僧侶
慈円(じえん)です。天台宗の座主(天台座主)として政治的にも大きな影響力を持ちました。
愚管抄の著者としても知られます。百人一首では
前大僧正慈円(さきのだいそうじょう じえん)と表記されます。
この歌は、慈円が座主になるよりもずっと前に詠まれたものです。若かりし慈円が、仏教の教えを胸に、仏法により民を救済しようとする決意を高らかに詠んだ歌といえます。
主な技法・単語・文法解説
■単語
■(※2)掛詞
「
掛詞」とは、ひとつの言葉に2つ以上の意味を重ねて表現内容を豊かにする技法のこと。この歌では「すみぞめ」が、住み始めを意味する「住み初め」と僧衣の色を表す「墨染め」の掛詞になっている。
■(※3)縁語
「おほふ」と「袖」が縁語。
「立つ」と「袖」が縁語。
※「縁語(えんご)」とは、和歌の修辞技法のひとつ。ひとつの和歌にある言葉と、意味や音声の上で関連のある言葉を用いて表現に幅をもたせる技法。
■句切れ
三句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
おほけなく | ク活用の形容詞「おほけなし」の連用形 |
憂き世 | ー |
の | 格助詞 |
民 | ー |
に | 格助詞 |
おほふ | ハ行四段活用「おほふ」の連体形 |
かな | 終助詞 |
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
立つ | タ行四段活用「たつ」の連体形 |
杣 | ー |
に | 格助詞 |
墨染 | ー |
の | 格助詞 |
袖 | ー |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。