源氏物語「葵・車争ひ」の原文・現代語訳と解説
このテキストでは、
源氏物語の
葵の章の一節「
車争ひ」(
大殿には、かやうの御歩きも〜)の現代語訳・口語訳とその解説をしています。
源氏物語とは
源氏物語は平安中期に成立した長編小説です。一条天皇中宮の藤原彰子に仕えた
紫式部が作者とするのが通説です。
原文・本文
(※1)大殿には、かやうの
(※2)御歩きも
をさをさしたまはぬに、御心地さへ
悩ましければ、
思しかけざりけるを、
若き人びと、
と言ふを、
(※4)大宮聞こしめして、
「 御
心地も
よろしき(※5)隙なり。さぶらふ人びともさうざうしげなめり。」
とて、
にはかにめぐらし仰せたまひて、見たまふ。
※つづく:
「車争ひ」(日たけゆきて、儀式もさざとならぬ〜)のわかりやすい現代語訳と解説
現代語訳・口語訳
葵の上は、このようなお出かけはめったになさらないうえに、(ご懐妊のために)ご気分まですぐれないので、(外出することに)思いをおかけにならなかったのですが、若い女房たちが、
「いやはや、自分たちどうし(だけ)で人目を避けて見物しますようなことは、見栄えがしないに違いないでしょう。(光源氏とご縁のない)世間一般の人でさえ、今日の物見には、対大将殿(光源氏)をこそ、身分が低い田舎者でさえ見申しげようとしているそうです。遠い国々から、妻子を引き連れながら参上してくるそうです。(葵の上が行列の光源氏を)ご覧になられないことは、たいそうあんまりなことでございますよ。」
と言うのを(葵の上の母君である)大宮がお聞きになり、
「ご気分も良い折です。お仕え申し上げる女房たちも物足りないようです。」
と言って、急に(外出の準備をするよう)お触れをお回しになり、(葵の上は行列を)ご覧になります。
※つづく:
「車争ひ」(日たけゆきて、儀式もさざとならぬ〜)のわかりやすい現代語訳と解説
品詞分解
源氏物語「車争ひ」(大殿には、かやうの御歩きも〜)の品詞分解
単語
(※1)大殿 | 葵の上。光源氏の正室。光源氏の子を身ごもっている |
(※2)御歩き | 新斎院の御禊の行列を見るためのお出かけ。光源氏も参列している |
(※3)おほよそ人 | 世間一般の人 |
(※4)大宮 | 葵の上の母君 |
(※5)隙 | 機会、折 |
関連テキスト
・源氏物語「
桐壷・光源氏の誕生」
・源氏物語「
夕顔・廃院の怪」
・源氏物語「
葵・物の怪の出現」
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・源氏物語「
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・源氏物語「
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