百人一首(9)小野小町/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
このテキストでは、
(小倉)百人一首に収録されている歌「
花の色は移りにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」の現代語訳・口語訳と解説(掛詞、句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は
古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
花の色は 移りにけりな いたづらに わが身世に(※1)ふる (※2)ながめせしまに
ひらがなでの読み方
はなのいろは うつりにけりな いたづらに わがみよにふる ながめせしまに
現代語訳
花の色は色あせてしまったことよ、長雨が降り続く間に。むなしく私もこの世で月日を過ごしてしまった、物思いにふけっている間に。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代前期の歌人で六歌仙・三十六歌仙に名を連ねた
小野小町(おの の こまち/をの の こまち)です。歌の才能とその美貌で知られていますが、生年月日や没年など、詳細は不明です。
この歌は、作者が(ⅰ)花の色があせていくことに自分の身が老いていくことのはかなさを重ねて詠んだ歌、または、(ⅱ)色あせて散りゆく花を惜しんだ歌、と考えられます。(ⅱ)の解釈だと、次のような現代語訳になります。
花の色は色あせてしまったことよ、むなしく私がこの世で月日を過ごして物思いにふけるうちに、そして長雨が降り続く間に。
主な技法・単語・文法解説
■(※1)、(※2)掛詞
「ふる」は「時が経つ」を意味する「
経」の連体形「ふる」と、「雨や雪が降る」を意味する「
降る」の連体形「ふる」が掛かった言葉です。
このようにひとつの言葉に2つの意味を持たせる技法を
掛詞と言います。掛詞の技法は「ながめ」にも用いられています。「ながめ」は「ぼんやりと物思いにふけること」を意味する「眺め」と、「長く降り続く雨」を意味する「長雨」の2つの意味を持ちます。
■句切れ
二句切れ。
品詞分解
※名詞は省略しています。
花 | ー |
の | 格助詞 |
色 | ー |
は | 係助詞 |
移り | ラ行四段活用「うつる」の連用形 |
に | 完了の助動詞「ぬ」の連用形 |
けり | 詠嘆の助動詞「けり」の終止形 |
な | 終助詞 |
いたづらに | 形容動詞・ナリ活用「いたづらなり」の連用形 |
わ | 代名詞 |
が | 格助詞 |
身 | ー |
世 | ー |
に | 格助詞 |
ふる | ハ行下二段活用「経」の連体形かつラ行四段活用「降る」の連体形 |
ながめ | 名詞 |
せ | サ行変格活用「す」の未然形 |
し | 過去の助動詞「き」の連体形 |
ま | ー |
に | 格助詞 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。