ひかふ/控ふ
このテキストでは、ハ行下二段活用の動詞「
ひかふ/控ふ」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ハ行下二段活用
未然形 | ひかへ |
連用形 | ひかへ |
終止形 | ひかふ |
連体形 | ひかふる |
已然形 | ひかふれ |
命令形 | ひかへよ |
■意味1:自動詞
待機する、進まないで留まる。
[出典]:見物は 枕草子
「ひかへたる車どもを見やりたるこそ、をかしけれ。」
[訳]:待機している牛車らを眺めるのが、面白い。
■意味2:自動詞
そばにいる、傍らに控える、しがみつく。
[出典]:
宇治川先陣 平家物語
「上がらむとすれば、後ろに者こそむずと
控へたれ。 」
[訳]:(川から岸に)あがろうとすると、後ろに誰かがむんずと
しがみついています。
■意味3:他動詞
引き止める。
[出典]:
大江山の歌 十訓抄
「...と言ひて、局の前を過ぎられけるを、御簾より半らばかり出でて、わづかに直衣の袖を
控へて...」
[訳]: ...と言って、局の前を通り過ぎられたところ、(小式部内侍は)御簾から半分ほど(体を)乗り出して、少し(定頼の中納言の着ている)直衣の袖を
引き止めて...
■意味4:他動詞
見合わせる、慎む、遠慮する。
[出典]:宇治拾遺物語
「異事どもをば、よく教へたりけれども、その一事をば控へて教へざりけり。」
[訳]:他の事などは、十分に教えたけれども、その一事は見合わせて教えなかった。
■意味5:他動詞
手に持つ、握る。
[出典]:
大納言殿参り給ひて 枕草子
「月のいみじう明かく、御直衣のいと白う見ゆるに、指貫を長う踏みしだきて、袖を
ひかへて『倒るな。』と言ひて、おはするままに...」
[訳]:月がとても明るくて、(大納言殿の)直衣がとても白く見えて、指貫を長く踏んで、袖を
握って「転ぶなよ。」と言って、お歩きになっていたところ...