なむ/なん
このテキストでは、古文単語「
なむ/なん/なむや/なんや」の意味、解説とその使用例を記しています。
「
なむ/なん」には、
・
係助詞
・
終助詞
・連語
・
助動詞
・
動詞
・
名詞
としての用法がある。この中で学習上重要とされるのは、係助詞、終助詞、連語としての用法であるが、ここでは、そのうち連語の用法の解説を行う。
※参照:
係助詞/終助詞の用法
※参照:
助動詞/動詞/名詞の用法
連語
完了(確述)の助動詞「ぬ」の未然形「な」+推量・意志の助動詞「む」の終止形「む」からなる連語と考えられる。
■意味1
(強い推量を表す)
きっと〜であろう。
[出典]:
更級日記 菅原孝標女
「盛りにならば、容貌も限りなくよく、髪もいみじく長くなり
なむ。」
[訳]:年ごろになれば、見た目もこの上なく美しく、髪も
きっとたいそう長くなる
だろう。
■意味2
(意志を表す)
〜してしまおう、必ず〜しよう。
[出典]:
枕草子 清少納言
「暁にはとく下り
なむといそがるる。」
[訳]:夜明け前には、早く退出
してしまおうと気がせかれます。
■意味3
(実現可能な推量を表す)
〜することができるだろう。
[出典]:
徒然草 兼好法師
「かばかりになりては、飛び降るるとも降り
なん。」
[訳]:このぐらいの高さであれば飛び降りる
ことがもきるだろう。
■意味4
(当然・適当・容認を表す)
〜のがよい、〜べきだ。
[出典]:徒然草 兼好法師
「「今は忘れにけり」と言ひてありなん。」
[訳]:「もう忘れてしまいました。」と言うのがよい。
■意味5
(仮定を表す)
〜としたら、〜してしまったならば。
[出典]:大鏡
「さばかりになりなむには、物の恥も知らでありなむ。」
[訳]:そのようになってしまったならば、恥も外聞もわきまえないでいるのがよい。
※「知らでありなむ」の「なむ」は、4(当然・適当・容認)の用法。
■意味6:なむや/なんや
(丁寧な命令を表す)
〜してくれないか。
※この用法の場合、語尾に
疑問を表す係助詞「や」を伴う。
[出典]:源氏物語 紫式部
「忍びては参り給ひなむや。」
[訳]:こっそりと参内なさってくださいませんか。
■意味7:なむや/なんや
(反語を表す)
〜だろうかいや〜ない。
※この用法の場合、語尾に
反語を表す係助詞「や」を伴う。
[出典]:徒然草
「恩愛の道ならでは、かゝる者の心に慈悲ありなんや。」
[訳]:親子のような情愛の道でなければ、このような(荒武者のような)者たちには慈悲の心があるだろうか、いやあるはずがない。
※参照:
係助詞/終助詞の用法
※参照:
助動詞/動詞/名詞の用法