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平家物語原文全集「一行阿闍梨之沙汰 4」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

一行阿闍梨之沙汰

ここに西塔の住侶、戒浄坊阿闍梨祐慶といふ悪僧あり。たけ七尺ばかりありけるが、黒革威の鎧の大荒目にかねまぜたるを、草摺ながに着なして、甲をば脱ぎ、法師原に持たせつつ、白柄の大長刀杖につき、

「あけられ候へ」


とて、大衆の中を押し分け押し分け、先座主のおはしける所へつっと参りたり。大の眼を見いからし、しばしにらまへ奉り、

「その御心でこそ、かかる御目にもあはせ給へ。とうとう召さるべう候ふ」


と申しければ、おそろしきにいそぎのり給ふ。大衆とりえ奉るうれしさに、いやしき法師原にはあらで、やんごとなき修学者どもかきささげ奉り、おめき叫んでのぼりけるに、人はかはれども、祐慶はかはらず、さき輿かいて、長刀の柄も輿のながえもくだけよととるままに、さしもさがしき東坂、平地を行くが如くなり。

つづき




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・平家物語原文全集「一行阿闍梨之沙汰 4」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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