蜻蛉日記
今日、かかる雨にもさはらで
今日、かかる雨にもさはらで、おなじところなる人ものへまうでつ。さはることもなきにとおもひていでたれば、ある者
「女神には衣(きぬ)ぬひてたてまつるこそよかなれ。さしたまへ」
とよりきてささめけば、
「いで、心みむかし」
とて、かとりのひひな衣三つぬひたり。下交(したか)ひどもにかうぞかきたりけるは、いかなる心ばへにかありけん、神ぞしるらんかし。
しろたへのころもはかみにゆづりてむ へだてぬ中にかへしなすべく
また、
からころもなれにしつまをうちかへし わがしたがひになすよしもがな
又、
なつごろもたつやとぞみるちはやぶる かみをひとへにたのむみなれば
暮るればかへりぬ。