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蜻蛉日記原文全集「かくて四月になりぬ」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

かくて四月になりぬ

かくて四月になりぬ。十日よりしも、また五月十日許(ばかり)まで、

「いとあやしくなやましき心ちになんある」


とて、例のやうにもあらで、七八日おほとのにて、

「念じてなん、おぼつかなさに」


などいひて、

「夜のほどにてもあれば、かくくるしうてなん、内裏(うち)へもまゐらねば、かくありきけりと見えんも、便(びん)なかるべし」


とて帰りなどせし人、おこたりてと聞くに、まつほど過ぐる心ちす。あやしと、人知れずこよひをこころみんと思ふほどに、はては消息だになくてひさしくなりぬ。めづらかにあやしと思へど、つれなしをつくりわたるに、夜は世界の車の声にむねうちつぶれつつ、ときどきは寝入りて、明けにけるはと思ふにぞ、ましてあさましき。をさなき人かよひつつ聞けど、さるはなでふこともなかなり。いかにぞとだに問ひふれざなり。ましてこれよりは、なにせんにかはあやしともものせんと思ひつつ、暮らし明かして、格子などあぐるに、見出だしたれば、夜、雨のふりけるけしきにて、木ども、露かかりたり。見るままにおぼゆるやう、

よのうちはまつにもつゆはかかりけり あくればきゆるものをこそ思へ


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・蜻蛉日記原文全集「かくて四月になりぬ」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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