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枕草子 原文全集「関白殿、二月廿一日に」 其の二

著者名: 古典愛好家
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さて、まことに寅の時かと装束きたちてあるに、あけはて日もさし出でぬ。西の対の唐廂にさしよせてなむ乗るべきとて、渡殿へあるかぎりゆくほど、まだうゐうゐしきほどなる今参などは、つつましげなるに、西の対に殿のすませ給へば、宮もそこにおはしまして、まづ女房ども車に乗せさせ給ふを御覧ずとて、御簾のうちに宮、淑景舎(しげいさ)、三四の君、殿の上、その御おとと三所、立ち並みおはしまさふ。
 

車の左右に、大納言殿、三位の中将、二所して簾うちあげ、下簾ひきあげて乗せ給ふ。うち群れてだにあらば、すこし隠れどころもやあらむ、四人づつ書き立てにしたがひて、

「それそれ」


と呼びたてて乗せ給ふに、あゆみ出づる心地ぞ、まことにあさましう、顕証なりといふも世の常なり。御簾のうちに、そこらの御目どもの中に、宮の御前の、みぐるしと御覧ぜむばかり、さらにわびしきことなし。汗のあゆれば、つくろひたてたる髪なども、みなあがりやしたらむとおぼゆ。からうじて過ぎいきたれば、車のもとに、はづかしげにきよげなる御さまどもして、うち笑みて見給ふも、うつつならず。されど、倒れでそこまでは行きつきぬるこそ、かしこきかおもなきか、思ひたどらるれ。
 
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渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 下」 新潮社

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