グリマルディ人とは
グリマルディ人(グリマルディマン)とは、1901年にイタリアのヴェンティミリア近くにあるグリマルディ洞窟で発見された、上部旧石器時代の人骨のことです。グリマルディマンは、当初は黒人に似た特徴を持つ古代の人類と考えられていましたが、現在ではクロマニョン人と同じ新人類の一派と見なされています。
※世界史用語では、グリマルディ人は黒人の一派とされています。最新の研究結果は変化する可能性があるため、注意してください。
グリマルディ人(グリマルディマン)の発見の経緯
グリマルディ洞窟は、地中海に面した赤い崖(バルジ・ロッシ)の近くにある、複数の洞穴からなる遺跡群です。19世紀後半から20世紀初頭にかけて、この地域では多くの旧石器時代の遺物や人骨が発見されました。グリマルディ洞窟の発掘は、モナコのアルベール1世公の資金援助によって行われました。彼は、グリマルディ家(モナコの王室)にちなんで、洞窟をグリマルディ洞窟と名付けました。
グリマルディ洞窟の中でも、特に注目されたのが、グロッテ・デザンファン(小児洞)と呼ばれる洞穴です。この洞穴からは、石器や動物の骨、女性像などが出土しました。また、この洞穴の最下層からは、2体の人骨が発見されました。これがグリマルディ人です。グリマルディ人は、一人は老年の女性、もう一人は16歳から17歳の青年でした。彼らの骨は、約2万6000年前から2万2000年前のものと推定されています。
グリマルディマンの形態学的特徴
グリマルディマンの骨は、堆積物の重みによって潰れていましたが、それでもなお、彼らの顔の形や頭の形には、興味深い特徴が見られました。グリマルディマンは、鼻が広く、顎が突出しており、頭が長く細いという、現代の黒人に似た特徴を持っていました。また、彼らの四肢は、特に下腿や前腕が長かったという。これらの特徴は、グリマルディマンを
ネグロイド型と呼ぶ理由となりました。
しかし、グリマルディマンは、黒人とは異なる特徴も持っていました。例えば、彼らの眼窩は、黒人のものよりも大きく、丸く、深かったという。また、彼らの頭蓋容積は、約1600立方センチメートルと、黒人の平均よりも大きかったという。これらの特徴は、グリマルディマンをクロマニョン人と近縁とする証拠となりました。
グリマルディ人(グリマルディマン)の年代測定
グリマルディマンの年代は、当初は比較的曖昧でした。グリマルディマンは、ネアンデルタール人とクロマニョン人の間に存在した、過渡的な人類である可能性が示唆されました。
しかし、現在では、放射性炭素年代測定法によって、グリマルディマンの年代がより正確に推定されています。グリマルディマンの骨は、約2万6000年前から2万2000年前のものと測定されています。これは、クロマニョン人の最初の出現(約4万年前)よりも後の時代です。したがって、グリマルディマンは、ネアンデルタール人とクロマニョン人の中間的な存在ではなく、クロマニョン人と同じ新人類の一派であると考えられます。