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5_80 世界の様々な地域 / 各国の名称と位置・大陸

「ガイアナ協同共和国」について調べてみよう

著者名: 早稲男
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ガイアナ協同共和国

ガイアナ協同共和国(以下「ガイアナ」、英語ではCo-operative Republic of Guyana)は、南アメリカ大陸北東部に位置する共和制国家です。首都はジョージタウンです。

このテキストでは、ガイアナの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。


1.国土:緑と水に恵まれた大地

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ガイアナの国土面積は約21万5千平方キロメートル(日本の本州よりやや小さい程度)で、南米大陸にありながら、歴史的・文化的にはカリブ諸国との繋がりが深い国です。東はスリナム、南と南西はブラジル、西はベネズエラと国境を接し、北は大西洋に面しています。

国土は大きく4つの地域に分けられます。

海岸平野

北部の大西洋沿岸に広がる低地帯です。国土面積の約5%に過ぎませんが、人口の90%以上が集中しています。首都ジョージタウンもこの地域にあります。海抜が低く、歴史的にオランダ式の堤防や運河(ポルダー)によって海水や洪水を防いできた土地です。肥沃な土壌を活かしたサトウキビや米の栽培が盛んです。


丘陵砂地帯

海岸平野の内陸側に広がる、白い砂と粘土からなる起伏のある地域です。ガイアナの主要な鉱物資源であるボーキサイトが豊富に埋蔵されています。また、森林地帯も広がっています。


内陸高地

国土の大部分を占める、広大な熱帯雨林と山地です。ガイアナ高地の一部をなし、テーブルマウンテン(テプイ)と呼ばれる独特な地形も見られます。手付かずの自然が残り、生物多様性の宝庫となっています。世界最大級の一枚岩の滝であるカイエトゥール滝もこの地域にあります。


内陸サバンナ

南西部のブラジル国境近くに広がる乾燥した草原地帯で、ルプヌニ・サバンナとして知られています。広大な牧草地が広がり、牧畜が営まれています。豊かな野生生物が生息しており、エコツーリズムの目的地としても注目されています。


国土の約8割以上が森林に覆われており、エセキボ川、デメララ川、バービス川といった大河が国土を縦断し、大西洋へと注いでいます。これらの川は、内陸部への交通路として、また水力発電の潜在的な資源として重要です。気候は、海岸部は年間を通じて高温多湿な熱帯雨林気候で、年2回の雨季(5月~8月中旬、11月中旬~1月下旬)があります。内陸部では気温差がやや大きくなります。

このように、ガイアナの国土は、海岸の低地から内陸の山岳地帯、サバンナまで、変化に富んだ地形と豊かな自然環境を有しています。


2.人口と人種:多様なルーツを持つ国民

ガイアナの推定人口は約81万9千人です。人口の多くは海岸平野、特に首都ジョージタウン周辺に集中しています。

ガイアナ社会の特徴の一つは、その民族構成の多様性です。これは、歴史的な経緯、特に植民地時代の労働力導入に深く関わっています。

東インド系(印僑)

人口構成比で最大のグループで、約40%を占めます。19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、主にサトウキビ農園の年季奉公労働者として、英領インドから移住してきた人々の末裔です。これは、ガイアナがイギリス領であったことに起因します。農業や商業など、幅広い分野で活躍しています。

アフリカ系

約29%を占めるのがアフリカ系の住民です。植民地時代に奴隷としてアフリカから連れてこられた人々の末裔です。奴隷解放後は、都市部での労働や公務員、専門職などに従事する人が多く見られます。

混血

約20%を占めます。 様々な民族的背景を持つ人々の間の交流の結果、生まれたグループです。

インディオ(先住民)

約10.5%を占めます。アラワク族、カリブ族、ワピシャナ族、マクシ族など、9つの主要な部族が国内、特に内陸部に居住しています。それぞれ独自の言語や文化、伝統を守りながら生活しています。近年、土地の権利や文化保護に関する主張が活発になっています。

その他

約1.5%で、ヨーロッパ系(主にポルトガル系)、中国系などが含まれます。ポルトガル系や中国系も、19世紀に労働者として移住してきた歴史を持ちます。


3.言語:公用語と日常語

ガイアナの公用語は英語です。行政、教育、メディアなど、公的な場面では英語が広く使用されています。これは、イギリスの植民地であった歴史的背景によるものです。南米大陸で唯一、英語が公用語の国となっています。

しかし、国民の日常生活で最も広く話されているのは、ガイアナ・クレオール語です。これは、英語を基盤に、アフリカ諸言語、ヒンディー語、先住民言語などの影響を受けて形成された独自の言語です。語彙や文法、発音に特徴があり、ガイアナ人のアイデンティティの一部となっています。ほとんどの国民がガイアナ・クレオール語を母語または第二言語として理解し、話すことができます。

さらに、国内には複数の先住民言語が存在します。アラワク語、カリブ語、ワピシャナ語、マクシ語などが、それぞれのコミュニティで話されていますが、話者数は減少傾向にあり、言語の維持・継承が課題となっています。

その他、少数ですが、ヒンディー語やウルドゥー語(印僑コミュニティの一部)、中国語なども話されています。

このように、ガイアナの言語状況は、公用語である英語と、広く使われるガイアナ・クレオール語、そして多様な先住民言語が共存する、多層的なものとなっています。


4.主な産業:変貌を遂げる経済

ガイアナ経済は、伝統的に農業と鉱業に依存してきましたが、近年、沖合での大規模な石油・ガス田の発見と生産開始により、劇的な変化を遂げています。

石油・ガス

2015年以降、エクソンモービルを中心とするコンソーシアムによって、沖合のスタブローク鉱区で相次いで有望な油田が発見されました。2019年末から原油生産が開始され、ガイアナは一躍、世界で最も急速に経済成長している国の一つとなりました。石油収入は国家財政を潤し、インフラ整備や社会開発への投資拡大が期待されています。しかし、急激な経済構造の変化は、「オランダ病」(資源依存による他産業の衰退)のリスクや、富の公平な分配、環境への影響といった課題ももたらしています。政府は、石油収入を管理するための「天然資源基金」を設立し、持続可能な開発を目指しています。

農業

石油産業が台頭する以前は、経済の基幹でした。現在もGDPや雇用において重要な役割を担っています。主要作物は砂糖と米で、これらは伝統的な輸出品目です。その他、ココナッツ、果物、野菜なども生産されています。政府は、食料安全保障と農業の多様化を推進しています。

鉱業

ガイアナは鉱物資源にも恵まれています。ボーキサイト(アルミニウムの原料)は長年にわたる主要輸出品の一つです。金とダイヤモンドの採掘も盛んで、特に金の生産は重要な外貨獲得源となっています。鉱業開発に伴う環境問題や、小規模鉱山労働者の労働条件などが課題となっています。

林業

広大な森林資源を背景に、木材生産が行われています。持続可能な森林管理の重要性が認識されており、国際的な基準に沿った伐採や、違法伐採対策が進められています。

漁業

大西洋岸や河川での漁業も行われており、エビなどが主な漁獲物です。

石油・ガス産業の急成長により、ガイアナ経済は大きな転換期を迎えています。この新たな富をいかに有効活用し、農業や鉱業といった既存産業とのバランスを取りながら、持続可能で包括的な発展を実現していくかが、今後の重要な課題です。


5.主な観光地:手付かずの自然と歴史的な街並み

ガイアナは、壮大な自然とユニークな文化を体験できる魅力的な観光地です。

カイエトゥール滝 (Kaieteur Falls)

ガイアナ観光のハイライトであり、世界最大級の一枚岩の滝です。落差は約226メートル(ナイアガラの滝の約4倍、ヴィクトリアの滝の約2倍)に達し、その水量と迫力は訪れる人々を圧倒します。

周辺はカイエトゥール国立公園に指定されており、豊かな熱帯雨林と多様な動植物が生息しています。黄金のカエルや、岩壁に生息する珍しい鳥など、固有の生物も見られます。アクセスは主に小型飛行機によるツアーとなりますが、その価値は十分にあります。

ジョージタウン (Georgetown)

首都であり、ガイアナ最大の都市です。「カリブの庭園都市」とも呼ばれる美しい街で、コロニアル様式の木造建築物が数多く残っています。特に、世界最大級の木造教会であるセント・ジョージ大聖堂や、鉄骨造りの特徴的なスターブローク・マーケットは必見です。オランダ統治時代の運河や、緑豊かな遊歩道も街の魅力となっています。ガイアナ国立博物館やウォルター・ロドニー人類学博物館など、国の歴史や文化を学べる施設もあります。

イウォクラマ国際熱帯雨林保護センター

Iwokrama International Centre for Rainforest Conservation and Development。ガイアナ中部にある広大な熱帯雨林保護区(約37万ヘクタール)です。持続可能な森林利用と生物多様性保全の研究・実践が行われています。キャノピーウォークウェイ(樹冠の吊り橋)からは、ジャガー、オオカワウソ、オオアリクイ、多種多様な鳥類など、豊かな野生生物を観察する機会があります。エコツーリズムの拠点として、宿泊施設やガイド付きツアーも提供されています。

ルプヌニ・サバンナ (Rupununi Savannah)

南西部に広がる広大なサバンナ地帯です。牧畜が盛んな一方で、手付かずの自然も残されており、ジャガー、オオアリクイ、オオアナコンダなどの野生動物や、数百種類の鳥類が生息する、生物多様性のホットスポットです。先住民コミュニティを訪ね、彼らの文化や伝統的な生活に触れることもできます。牧場(ランチョ)での滞在や、カヌーでの川下り、バードウォッチングなどが人気のアクティビティです。

シェルト・ビーチ (Shell Beach)

北西部の海岸線に位置する、絶滅危惧種のウミガメ(オサガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガメ)の産卵地として国際的に重要な場所です。産卵期(主に3月~8月)には、多くのウミガメが上陸する姿を観察できます。保護活動が行われており、エコツーリズムを通じてその活動を支援することも可能です。


6.文化

ガイアナの文化は、その多様な民族構成を反映した、まさに「るつぼ」のような様相を呈しています。アフリカ、インド、ヨーロッパ、中国、そして先住民の文化が、長年にわたって相互に影響を与え合い、独自の文化を育んできました。

祝祭

ガイアナでは、様々な民族的・宗教的背景を持つ祝祭が国民の祝日として祝われています。

マシュラマニ (Mashramani)

毎年2月23日の共和国記念日を祝う、ガイアナ最大のお祭りです。「協力の成果」を意味する先住民の言葉に由来し、カラフルなフロート(山車)のパレード、カリプソやソカの音楽コンテスト、スティールパンの演奏、路上でのダンスなどが繰り広げられ、国中が熱気に包まれます。

ディーワーリー (Diwali)

ヒンドゥー教の「光の祭り」で、国内のヒンドゥー教徒コミュニティによって盛大に祝われます。家々や寺院が数千の小さな土製のランプ(ディヤ)で飾られ、幻想的な雰囲気に包まれます。

ファグワー (Phagwah / Holi)

ヒンドゥー教の春の祭りで、色粉や色水を掛け合って祝います。

イード・アル=アドハー (Eid al-Adha)

イスラム教の「犠牲祭」で、イスラム教徒コミュニティにとって重要な祝日です。

クリスマス (Christmas)

キリスト教徒にとって最も重要な祝祭の一つで、家族で集まり、特別な料理を楽しむなどして祝われます。アフリカ系の伝統に由来するマスカレード・バンド(仮装行列)が登場することもあります。 これらの祝祭は、それぞれのコミュニティだけでなく、国全体で祝われることも多く、民族間の相互理解と文化交流の機会となっています。

音楽

ガイアナの音楽シーンも多様です。カリブ海諸国共通のカリプソやソカ、レゲエが人気です。印僑コミュニティからは、インドの伝統音楽とカリブのリズムが融合したチャットニー・ミュージックが生まれ、広く親しまれています。スティールパンの演奏も盛んです。

食文化

ガイアナ料理は、各民族の食文化が融合した、スパイシーで風味豊かなものが特徴です。国民食とも言えるペッパーポット (Pepperpot)は、カッサバの搾り汁(カサレップ)をベースに肉を煮込んだ、先住民起源の料理です。その他、メタゲムジー (Metemgee)(ココナッツミルクで根菜やプランテンを煮込んだ料理)、様々な種類のカリー、ロティ(インド風の薄焼きパン)、クックアップ・ライス(豆や肉とご飯を炊き込んだもの)、中華系の炒飯や麺料理などが日常的に食べられています。

宗教

宗教の自由が保障されており、主にキリスト教(プロテスタント、カトリックなど)、ヒンドゥー教、イスラム教が信仰されています。各宗教施設が共存し、異なる宗教の祝祭が国民の祝日となっていることは、ガイアナ社会の寛容性を示しています。

文学・芸術

ガイアナは、エドガー・ミッテルホルツァー、ウィルソン・ハリス、マーティン・カーター、A. J. シーモアなど、カリブ文学において重要な作家を輩出してきました。絵画や彫刻などの視覚芸術も、多様な文化を反映して発展しています。


7.スポーツ

ガイアナで最も人気のあるスポーツは、クリケットです。イギリス植民地時代の影響が色濃く残り、国民的な情熱の対象となっています。ガイアナは、西インド諸島(カリブ海の英語圏諸国・地域が合同で編成するチーム)クリケットチームの重要な一部であり、シヴナリーン・チャンダーポールやクライヴ・ロイドなど、世界的に有名な選手を数多く輩出してきました。国内リーグも盛んで、地域間の対抗意識も強いです。首都ジョージタウンにあるプロビデンス・スタジアムは、国際試合も開催される主要なクリケット競技場です。

サッカーもまた、非常に人気のあるスポーツです。ガイアナサッカー連盟(GFF)が国内のサッカーを統括しており、代表チーム「ゴールデン・ジャガーズ」は、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)の大会に参加しています。近年、代表チームの強化や国内リーグの整備が進められています。

その他、陸上競技、ボクシング、バスケットボール、バレーボール、卓球なども人気があります。特にボクシングでは、過去に世界チャンピオンも輩出しています。


8.日本との関係

ガイアナ協同共和国と日本は、1967年6月7日に外交関係を樹立して以来、半世紀以上にわたり友好関係を築いています。

経済協力

日本は、政府開発援助(ODA)を通じて、ガイアナの経済社会開発を支援してきました。特に、インフラ整備(道路、電力供給、水産施設など)や防災、環境保全、水産分野での協力実績があります。例えば、東デメララ地域の配水インフラ整備計画や、水産市場複合施設の整備などが挙げられます。これらの協力は、ガイアナ国民の生活向上と持続可能な開発に貢献しています。

貿易関係

日本とガイアナ間の貿易規模は大きくありませんが、日本はガイアナから主にボーキサイトや非鉄金属などを輸入し、ガイアナへは自動車などを輸出しています。近年のガイアナにおける石油・ガス開発の進展は、今後の両国間の経済関係に新たな可能性をもたらすかもしれません。

人的・文化交流

大規模な交流はまだ少ないものの、日本の技術協力専門家の派遣や研修員の受け入れなどを通じた人的交流が行われています。また、スポーツや文化を通じた交流の機会も模索されています。在留邦人数は多くありませんが2023年10月1日現在:9人)、両国の相互理解を深めるための交流促進が期待されます。
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世界銀行 (World Bank)
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