百人一首(13)陽成院/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
つくばねの 峰よりおつる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(歌枕・縁語など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。
この歌は、百人一首の他に、
後撰和歌集にも収録されていますが、後撰和歌集では「つくばねの峰よりおつるみなの川恋ぞつもりて淵となり
ける」となっています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
※
暗記に役立つ百人一首一覧
原文
(※1)つくばねの 峰よりおつる (※2)みなの川 恋(※3)ぞつもりて 淵となりぬる
ひらがなでの読み方
つくばねの みねよりおつる みなのがわ こひぞつもりて ふちとなりぬる
現代語訳
筑波山の頂から(流れ)落ちるみなの川(の水量が次第に増して深い淵になるように)、(初めは少し気になるぐらいだったあなたへの)恋心も積もり積もって(深い)淵となったことです。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、57代天皇、
陽成院(ようぜいいん/または陽成天皇)です。
筑波山は西側の男体山と東側の女体山からなる山です。また、そこから流れ出る「みなの川」は「男女川」とも書き、男女の仲を連想させます。後撰和歌集の詞書によると、この歌は、「釣殿(つりどの)の皇女(みこ)」という女性に贈られたものです。釣殿の皇女はのちの陽成天皇のお后となった人。まさ熱烈なラブレターと言えますね。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)つくばね | 歌枕。現在の茨城県西部にある筑波山。山頂は男体山と女体山の二峰に別れており、古くから、男女が集い歌舞する自由恋愛の行事の場所として知られた |
(※2)みなの川 | つくばねから流れ出る「みなの川」は「男女川」とも書き、男女の仲を連想させる |
■(※1)歌枕
「つくばね」が歌枕。歌に詠み込まれている名所のことを歌枕という。以下に例を記す。
【逢坂の関】
これやこの行くも帰るも別れては知るも知らぬも逢坂の関
【生駒山】
君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
■(※3)係り結び
恋ぞつもりて淵となりぬる | 「ぞ」(強意の係助詞)⇒「ぬる」(完了の助動詞「ぬ」の連体形)が係り結び。 |
■縁語
「淵」と「川」が縁語。
※「縁語(えんご)」とは、和歌の修辞技法のひとつ。ひとつの和歌にある言葉と、意味や音声の上で関連のある言葉を用いて表現に幅をもたせる技法。
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
つくばね | ー |
の | 格助詞 |
峰 | ー |
より | 格助詞 |
おつる | タ行上二段活用「おつ」の連体形 |
みなの川 | ー |
恋 | ー |
ぞ | 強意の係助詞 |
つもり | ラ行四段活用「つもる」の連用形 |
て | 接続助詞 |
淵 | ー |
と | 格助詞う |
なり | ラ行四段活用「なる」の連用形 |
ぬる | 完了の助動詞「ぬ」の連体形 |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。