やさし/恥し
このテキストでは、シク活用の形容詞「
やさし/恥し」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「やさし」には
①恥し
②
優し
などの用法があるが、ここでは「①恥し」を扱う。
形容詞・シク活用
未然形 | やさしく | やさしから |
連用形 | やさしく | やさしかり |
終止形 | やさし | ◯ |
連体形 | やさしき | やさしかる |
已然形 | やさしけれ | ◯ |
命令形 | ◯ | やさしかれ |
■意味1
(身も細くなるほど)
つらい、耐え難い。
[出典]:
山上憶良
「世の中を憂しと
やさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」
[訳]:世の中をつらい、
身も細くなるほど耐え難いと思うけれども、(どこかへ)飛んでいくことはできない。鳥ではないのだから。
■意味2
恥ずかしい、肩身が狭い、気が引ける、きまりが悪い。
[出典]:かぐや姫の昇天 竹取物語
「昨日今日帝ののたまはむことにつかむ、人聞きやさし。」
[訳]:昨日今日、帝がおっしゃることに従うのは、世間へのきまりが悪い。
■意味3
慎ましやかだ、慎み深い、遠慮がちだ、控えめだ。
[出典]:
雲林院の菩提講 大鏡
「繁樹は百八十におよびてこそさぶらふらめど、
やさしく申すなり。」
[訳]:繁樹は百八十歳になっておりましょうが、
慎ましやかに(何歳か覚えていないと)申し上げるのです。