とく/解く
このテキストでは、古文単語「
とく/解く」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「とく」には
①解く
②説く
③
疾く
などの用法があるが、ここでは「①解く」を扱う。
また、「解く」には
①カ行下二段活用
②カ行四段活用
の用法がある。
②カ行下二段活用
未然形 | とけ |
連用形 | とけ |
終止形 | とく |
連体形 | とくる |
已然形 | とくれ |
命令形 | とけよ |
■意味1:自動詞
(結び目などが)ほどける。
[出典]:万葉集
「草枕旅の衣の紐とけて思ほゆるかもこの年ころは」
[訳]:旅の衣のひもがほどけて、(妻との)この数年のことが思われることです
■意味2:自動詞
(わだかまりが)消える、打ち解ける。
[出典]:箒木 源氏物語
「さりとも今宵、日ごろの恨みは解けなむ。」
[訳]:いくらなんでも今夜は、日ごろの恨みはきっと消えるだろう。
■意味3:自動詞
(職を)離れる、免職される。
[出典]:古今和歌集
「官解けてはべりけるとき詠める。」
[訳]:官職から離れておりましたときに詠んだ。
②カ行四段活用
未然形 | とか |
連用形 | とき |
終止形 | とく |
連体形 | とく |
已然形 | とけ |
命令形 | とけ |
■意味1:他動詞
(結び目などを)ほどく。
[出典]:大和物語
「『これを形見にしたまへ。』とて、帯を解きて取らせけり。」
[訳]:(男は)「これを形見にしなさい」と言って、帯をほどいて(女に)与えた。
■意味2:他動詞
(髪を)とかす、くしで整える。
[出典]:手習 源氏物語
「いたう乱れず、解きはてたれば艶々とけうらなり。」
[訳]:それほど乱れておらず、くしでとかし終わってみると艶々と美しい様子です。
■意味3:他動詞
取り除く、脱ぐ。
[出典]:
阿蘇の史 今昔物語
「着たる装束を皆
解きて、片端より皆たたみて、車の畳の下にうるはしく置きて、其の上に畳を敷きて、史は冠をし、したうづをはきて、裸になりて車の内に居たり。」
[訳]:着ていた衣装を全部
脱いで、片端から全てたたみ、牛車の(中に敷いてある)畳の下にきちんと置き、その上に畳を敷いて、史は冠をし、靴下をはき、裸になって牛車の中にいた。
■意味4:他動詞
解決する、解答する。
[出典]:大覚寺殿にて 徒然草
「大覚寺殿にて、近習の人ども、なぞなぞを作りて解かれける処へ...」
[訳]:大覚寺殿で、主君の側に仕える人たちが、なぞなぞを作って解いていらっしゃったところに...
■意味5:他動詞
溶かす。
[出典]:
古今和歌集
「袖ひちてむすびし水のこほれるを春立つけふの風や
とくらむ」
[訳]:(夏の日に)袖がぬれて(手に)すくった川の水が、(冬の間は)凍っていたのを、立春の今日の風が吹き
溶かしているのだろうか。