「やる/遣る」の意味・活用・使用例【ラ行四段活用】
このテキストでは、ラ行四段活用の動詞「
やる/遣る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「やる」には
①遣る
②
破る
③やる(尊敬の助動詞)
などの用法があるが、ここでは「①遣る」を扱う。
ラ行四段活用
未然形 | やら |
連用形 | やり |
終止形 | やる |
連体形 | やる |
已然形 | やれ |
命令形 | やれ |
■意味1:他動詞
(人を)
行かせる、派遣する。
[出典]:
成方の笛 十訓抄
「『千石に買はむ。』とありけるを、売らざりければ、たばかりて使ひを
やりて...」
[訳]:(俊綱が)「千石で買おう。」といったのですが、(成方は笛を)売らなかったので、(俊綱は)たくらんで使いの者を(成方のもとに)
行かせて...
■意味2:他動詞
(物を)
送る、贈る、与える。
[出典]:
初冠 伊勢物語
「男の、着たりける狩衣の裾を切りて、歌を書きて
やる。」
[訳]:男は、着ていた狩衣の裾を切って、(それに)歌を書いて(姉妹に)
贈る。
■意味3:他動詞
憂さ晴らしをする、気を晴らす。
[出典]:万葉集
「夜光る玉といふとも酒飲みて心をやるにあに及かめやも」
[訳]:夜に光る玉(宝石)といっても、酒を飲んで憂さ晴らしをすることにどうして勝るだろうか、いや勝らない
■意味4:他動詞
(水を)流れていくようにする。
(車を)先へ進める。
[出典]:
阿蘇の史 今昔物語
「夜ふけて家に帰りけるに、東の中の御門より出でて車に乗りて、大宮下りに
やらせて行きけるに...」
[訳]:夜がふけてから家に帰ったときに、東の中の門から出発して牛車に乗り、大宮大路を南に下って
先へ進めさせて行ったのだが...
■意味5:他動詞
逃がす。
■意味6:補助動詞
遠くまで〜する、はるかに〜する。
[出典]:
東下り 伊勢物語
「その河のほとりにむれゐて、思ひ
やればかぎりなく遠くも来にけるかなと、わびあへるに...」
[訳]:その川のほとりで群がり座って、(都へと)
はるかに思いをはせ
ると果てしなく遠くまできたものだなあと、(皆で)一緒に気弱になっているところ...
■意味7:補助動詞
すっかり〜する、最後まで〜(をやり)きる。
※この用法の場合、後ろに打消の語を伴う場合が多い。
[出典]:桐壷 源氏物語
「言ひもやらず、むせかへり給ふほどに...」
[訳]:(桐壷の母君は)最後まで言いきることができず、むせび泣いていらっしゃるうちに...