社会契約説の登場
グロティウスの著作を通じて、自然法の重要性が認識されるようになると、新たな政治思想として
社会契約説が現れます。
社会契約説とは、自然法を基礎として、「社会も国家も人々一人ひとりとの契約によって存在している」という考え方です。
社会契約説を唱えた思想家を紹介します。
ホッブス(1588~1679)
イギリス経験論の哲学者で、政治学者でもあった人物です。清教徒革命の混乱からフランスに亡命し、そこで著書『
リヴァイアサン』を執筆しました。
(ホッブス)
彼はこの本の中で、人間の自然状態を「
万人の万人に対する闘争」と定義しました。
自然状態というのは、人間が社会や共同体、政治体をつくらなかった場合の人間一人ひとりがバラバラに成った状態を指します。
人間を利己的な存在だと考えたホッブスは、自然状態のままにしておけば、人間は常に争いをやめない、つまり「万人の万人に対する闘争」が続くと考えたのです。
このような状況を避けるために、ホッブスは人間の自然権を政府(旧約聖書の怪物リヴァイアサンに例えられました)に譲渡するべきだと説いたのです。
(リヴァイアサンの口絵)
このように、ホッブスは社会契約説の先駆者でしたが、
王権神授説にかわり、絶対王政を擁護する理論を構築したのです。
ロック(1632~1704)
ロックはイギリスの政治学者です。彼は、著作「
市民政府二論(統治論二篇)」を著し、ホッブスとは異なる政治思想を展開します。
(ロック)
彼は自然状態のもとで人間は
生命・自由・財産という自然権を有していると考えました。また、人々はこれらを守り維持していくために、国家や政府と契約を結んだと主張したのです。
ロックはさらに、個々人の自然権を守るための契約を、国家や政府が一方的に侵害するのならば、人々が権力に対抗し国家や政府を変えることが出来ると述べたのです。
つまり、絶対王政を否定し、「
革命」の正当性を論理的に確立したのです。
これを
抵抗権といい、のちのフランス革命など市民革命の根拠となります。
また、ロックは、権力の集中によって専制政治がしかれることによって、個人の自然権が侵害される可能性が高まるとして、権力分立の重要性を説きました。