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十八史略『荊軻』(燕王喜太子丹質於秦〜)書き下し文・現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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現代語訳

燕王喜の太子丹、秦に質たり。
燕の王であった喜の皇太子である丹は、秦に人質とされていました。



秦王政礼せず。
秦の王であった政は(丹を)礼遇しませんでした。

怒りて亡(に)げ帰る。
(丹は)怒って自国に逃げ帰りました。

秦を怨み之に報いんと欲す。
秦のことを恨んでこれに報復したいと考えていました。

秦の将軍樊於期(はんおき)、罪を得亡げて燕に之く。
(ある時)秦の将軍であった樊於期が、罪に問われて燕に逃げてきました。

丹受けて之を舎す。
丹は(樊於期を)受け入れて館にかくまいました。

丹衛人(えいひと)荊軻(けいか)の賢なるを聞き、辞を卑(ひく)くし礼を厚くして之を請ふ。
丹は、衛国の人である荊軻が優れた人物であるということを聞いて、へりくだった言葉遣いをし、贈り物を手厚くして荊軻を招きました。

奉養至らざる無し。
至らぬところがないほどの優遇ぶりでした。



軻を遣はさんと欲す。
(丹は)荊軻を(秦王暗殺のために秦へと)派遣しようとしました。

軻樊将軍の首及び燕の督亢(とくこう)の地図を得て以て秦に献ぜんと請ふ。
荊軻は、樊将軍の首と燕の督亢(という土地)の地図をもらって秦に献上したいと願い出ました。

丹於期を殺すに忍びず。
丹は、樊於期を殺すのは忍びないと考えていました。

軻自ら意を以て之を諷(ふう)して曰はく、
荊軻は、自分の考えで(樊於期を尋ね)彼をいさめて言いました。

「願はくは将軍の首を得て、以て秦王に献ぜん。
「どうか、将軍の首を手にして、秦王に献上させてください。

必ず喜びて臣を見ん。
(秦王は)必ず喜んで私と会うでしょう。



臣左手に其の袖を把(と)り、右手もて其の胸を揕さば、則ち将軍の仇報いられて、燕の恥雪(すす)がれん」と。
私は左手で秦王の着物の袖を掴み、右手でその胸を刺しましょう、(そうすれば)将軍の仇に報いることができ燕の恥もすすがれましょう。」と。


於期遂に慨然(がいぜん)として自刎す。
樊於期はとうとう心を奮い立たせて自分で首を斬ったのです。


つづく:十八史略『荊軻』(丹奔往、伏哭〜)書き下し文・現代語訳と解説

単語・文法解説

太子貴族の世継のことで、ここでは皇太子と訳す
秦王政不礼焉丹と政は幼いころ趙の人質に出されており、2人には親交があったにもかかわらず、冷たくあしらわれたことに怒った
燕督亢地図燕の土地であった督亢を割譲するということを申し出ていることを指す
いさめること
燕之恥秦の王に冷たくあしらわれたこと
慨然心を奮い立たせる様
自刎自ら首を斬って自害すること




著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。
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・十八史略『荊軻』(燕王喜太子丹質於秦〜)書き下し文・現代語訳と解説

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鎌田正、米山寅太郎 著 2011 『新漢語林 第二版』大修館書店
『教科書 探求古典B 漢文編』 桐原書店

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