新規登録 ログイン

9_80 その他 / その他

蜻蛉日記原文全集「ふる年に節分するを」

著者名: 古典愛好家
Text_level_1
マイリストに追加
蜻蛉日記

ふる年に節分するを

ふる年に節分するを、

「こなたに」


などいはせて

いとせめておもふ心をとしのうちに はるくることもしらせてしがな

かへりごとなし。また、

「ほどなきことを、すぐせ」


などやありけむ。

かひなくてとしくれはつるものならば はるにもあはぬみともこそなれ

こたみもなし。いかなるにかあらんと思ふほどに、

「とかういふ人あまたあなり」


ときく。さてなるべし、

われならぬ人まつならばまつといはで いたくなこしそおきつしらなみ

かへりごと、

こしもせずこさずもあらずなみよせの はまはかけつつとしをこそふれ

年(とし)せめて、

さもこそはなみのこころはつらからめ としさへこゆるまつもありけり

かへりごと、

ちとせふるまつもこそあれほどもなく こえてはかへるほどやとほかる

とぞある。あやし、なでふことぞと思ふ。風ふきあるるほどにやる。

ふくかぜにつけても物をおもふかな 大うみのなみのしづ心なく

とてやりたるに、

「きこゆべき人は、けふのことをしりてなん」


と異手(ことて)して、一葉(ひとは)ついたる枝につけたり。たちかへり、

「いとほしう」


などいひて、

わがおもふ人はたそとはみなせども なげきのえだにやすまらぬかな

などぞいふめる。


Tunagari_title
・蜻蛉日記原文全集「ふる年に節分するを」

Related_title
もっと見る 

Keyword_title

Reference_title
The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 6,089 pt 
 役に立った数 1 pt 
 う〜ん数 0 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!