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蜻蛉日記原文全集「さて助に、かくてやなどさかしらがる人のありて」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

さて助に、かくてやなどさかしらがる人のありて

さて助に、

「かくてや」


など、さかしらがる人のありて、ものいひつく人あり。八橋(やつはし)のほどにやありけん、はじめて、

かづらきやかみよのしるしふかからば ただひとことにうちもとけなん

かへりごと、こたびはなかめり。

かへるさのくもではいづこやつはしの ふみみてけんとたのむかひなく

こたみぞかへりごと、

かよふべきみちにもあらぬやつはしを ふみみてきともなにたのむらん

とかき手して書いたり。又

なにかそのかよはんみちのかたからん ふみはじめたるあとをたのめば

又、かへりごと、

たづぬともかひやなからんおほぞらの くもぢはかよふあとはかもあらじ

まけじとおもひ顔なめれば、又

おほぞらもくものかけはしなくはこそ かよふはかなきなげきをもせめ

かへし、

ふみみれどくものかけはしあやふしと おもひしらずもたのむなるかな

又やる、

なほをらん心たのもしあしたづの くもぢおりくるつばさやはなき

こたみは、

「くらし」


とてやみぬ。


しはすになりにたり。又、

かたしきしとしはふれどもさごろもの なみだにしむるときはなかりき

「ものへなん」


とて、かへりごとなし。又の日許(ばかり)、かへりごと乞(こ)ひにやりたれば、そばの木に

「みき」


とのみ書きておこせたり。やがて

我がなかはそばみぬるかとおもふまで みきとばかりもけしきばむかな

かへりごと、

あまぐもの山のはるけきまつなれば そばめるいろはときはなりけり

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・蜻蛉日記原文全集「さて助に、かくてやなどさかしらがる人のありて」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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