蜻蛉日記
又この袈裟のこのかみも法師にてあれば
又、この袈裟(けさ)のこのかみも法師にてあれば、祈りなどもつけてたのもしかりつるを、にはかに亡くなりぬと聞くにも、このはらからの心ちいかならん、われもいとくちをし、たのみつる人のかうのみ、など思ひみだるれば、しばしばとぶらふ。さるべきやうありて、雲林院に候ひし人なり。四十九日などはてて、かくいひやる。
おもひきやくものはやしをうちすてて そらのけぶりにたたむものとは
などなん、おのが心ちのわびしきままに、野にも山にもかかりける。はかなながら秋冬もすごしつ。