蜻蛉日記
かかるほどに、祓のほどもすぎぬらん
かかるほどに、祓(はらへ)のほどもすぎぬらん、七夕はあすばかりと思ふ。忌も四十日ばかりになりにたり。日ごろなやましうてしはぶきなどいたうせらるるを、物怪(もののけ)にやあらん、加持(かぢ)もこころみむ、狭ばきどころのわりなく暑きころなるを、例もものする山寺へのぼる。 十五六日になりぬれば、盆などするほどになりにけり。見れば、あやしきさまに荷なひいただき、さまざまにいそぎつつ集まるを、もろともに見てあはれがりもわらひもす。さて心ちもことなることなくて、忌みもすぎぬれば京にいでぬ。秋冬はかなうすぎぬ。