人ばへするもの
人ばへするもの。ことなることなき人の子の、さすがにかなしうしならはしたる。しわぶき。はづかしき人にものいはむとするに、先に立つ。
あなたこなたにすむ人の子の、四つ五つなるは、あやにくだちて、ものとりちらしそこなふを、ひきはられ、制せられて、心のままにもえあらぬが、親のきたるに所得て、
「あれ見せよ。やや、はは」
などひきゆるがすに、大人どものいふとて、ふと聞きいれねば、手づからひきさがし出でて、見さわぐこそ、いとにくけれ。それを、
「まな」
ともとりかくさで、
「さなせそ、そこなふな」
などばかり、うち笑みいふこそ、親もにくけれ。我はた、えはしたなうもいはで見るこそ、心もとなけれ。