百人一首(91)後京極摂政前太政大臣/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方
きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣片敷き ひとりかも寝む
このテキストでは、
百人一首に収録されている歌「
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣片敷きひとりかも寝む」の現代語訳・口語訳と解説(本歌取り、掛詞、係り結びなど)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に、
新古今和歌集にも収録されています。
百人一首とは
百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・
藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、
小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。
暗記に役立つ百人一首一覧
以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。
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暗記に役立つ百人一首一覧
原文
(※1)きりぎりす 鳴くや霜夜の (※2)さむしろに 衣片敷き ひとりかも寝む
ひらがなでの読み方
きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねむ
現代語訳(口語訳)
こおろぎの泣いている、霜の降りる寒々とした夜のむしろに、自分の衣だけを敷いて私はひとりで寂しく寝るのだろうか。
解説・鑑賞のしかた
この歌の詠み手は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての公卿・歌人、
九条良経(くじょうよしつね)です。百人一首には
後京極摂政前太政大臣(ごきょうごくせっしょうさきのだじょうだいじん)として収録されています。
衣片敷きとは、1人で寝ることを指します。恋人と寝るときは、互いの衣を敷き交わして寝る習慣がありました。「衣片敷き=衣を交わす人がいない=独り身」という解釈です。そして霜の降りる寒い夜、こおろぎの鳴き声に独り身のさびしさを感じるという嘆きを詠んだ歌です。
主な技法・単語・文法解説
■単語
(※1)きりぎりす | 現在のこおろぎのこと。秋の季節に、人の悲しみをかきたてるものとして用いられた |
■本歌取り
この歌は、次の2つの歌をもとにしたものです。
さむしろに 衣かたしき 今宵もや 我を待つらむ 宇治の橋姫
あが恋ふる 妹は逢はさず 玉の浦に 衣片敷き ひとりかも寝む
すでにある歌をオマージュに新しい歌を詠む技法を
本歌取りといいます。
■(※2)掛詞
「
掛詞」とは、ひとつの言葉に2つ以上の意味を重ねて表現内容を豊かにする技法のこと。この歌では、「さむしろ」が、「さむし(寒い)」と「狭筵(狭いむしろ)」をかけた掛詞になっている。
■句切れ
句切れなし。
品詞分解
※名詞は省略しています。
きりぎりす | ー |
鳴く | カ行四段活用「なく」の連体形 |
や | 間接助詞 |
霜夜 | ー |
の | 格助詞 |
さむしろ | ー |
に | 格助詞 |
衣 | ー |
片敷き | カ行四段活用「かたしく」の連用形 |
ひとり | ー |
かも | 係助詞・係り結び |
寝 | ナ行下二段活用「ぬ」の未然形 |
む | 推量の助動詞「む」の連体形・係り結び |
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。