はじめに
このテキストでは、
万葉集で詠まれている「
熟田津に 船乗りせしむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな」という歌について説明していきます。
原文
熟田津に 船乗りせしむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな
現代語訳
熟田津で船で出発しようと待っている。月が出てきたので潮の流れもでてきた。さぁ、漕ぎ出そう。
解説
この歌は、額田王(ぬかたのおおきみ)によって詠まれた歌です。(一説には
斉名天皇が詠んだのではないかという説もあります。)額田王は王とついていますが女性です。熟田津(にきたつ)とは地名のことです。正確にどこなのかはわかっていませんが、愛媛県の道後温泉あたりなのではないかと言われています。この歌が詠まれたときの情景を説明しておきましょう。
この歌が詠まれたのは、
白村江の戦いと呼ばれる戦いの時期です。この戦いは朝鮮半島で当時勢力を持っていた国々の争いです。
高句麗、
百済、
新羅、
任那の4カ国がありました。日本は任那を通して朝鮮半島で一定の力をもっていたのですが、この戦いのために日本からわざわざ出兵をしました。熟田津でちょっと旅の疲れをいやして、「さぁ出発だ!」というときに詠まれたのがこの歌です。