かづく/被く
このテキストでは、古文単語「
かづく/被く」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
「かづく」には
①被く
②潜く
があるが、ここでは「①被く」を扱う。さらに「被く」には
①カ行四段活用
②カ行下二段活用
の用法がある。
①カ行四段活用
未然形 | かづか |
連用形 | かづき |
終止形 | かづく |
連体形 | かづく |
已然形 | かづけ |
命令形 | かづけ |
■意味1:他動詞
頭からかぶる。
[出典]:
これも仁和寺の法師 徒然草
「これも仁和寺の法師、童の法師にならんとする名残とて、おのおの遊ぶことありけるに、酔ひて興に入るあまり、傍らなる足鼎を取りて、頭に
かづきたれば...」
[訳]:これも仁和寺の法師(の話)、子どもが法師になろうとする別れということで、それぞれが音楽や詩歌、舞などを楽しんだたことがあったのだが、酔って面白がるあまり、側にある足鼎をとって、
頭にかぶったところ...
■意味2:他動詞
褒美として衣服を頂く、頂いた衣服を左肩にかける。
[出典]:大和物語
「大将も物かづき、忠岑も禄たまはりなどしけり。」
[訳]:大将も褒美のものを左肩にかけ、忠岑も褒美を賜るなどした。
■意味3:他動詞
(責任などを)
負う、身に引き受ける。
[出典]:心中万年草
「男のある娘をかづかせて...」
[訳]:男のいる娘を引き受けさせて...
②カ行下二段活用
未然形 | かづけ |
連用形 | かづけ |
終止形 | かづく |
連体形 | かづくる |
已然形 | かづくれ |
命令形 | かづけよ |
■意味1:他動詞
頭からかぶせる。
[出典]:伊勢集
「円居する身に散りかかる紅葉は風のかづくる錦なりけり」
[訳]:団欒している私の身に散りかかる紅葉の葉は、風が(私の)頭からかぶせる錦であることよ
■意味2:他動詞
衣服を褒美として与える/肩にかけてやる、褒美を与える。
[出典]:伊勢物語
「昔、県へ行く人に、馬の餞せむとてよびて、うとき人にしあらざれば、家刀自さかづきささせて、女の装束かづけむとす。」
[訳]:昔、地方の国へと赴任する人に、馬の餞をしようと招待して、親しくない人でもないので、(その家の)主婦が盃をすすめさせて、女性物の装束を褒美に与えようとする。
■意味3:他動詞
責任などを押し付ける/負わせる、他人のせいにする。
[出典]:日本永代蔵
「自分商ひを仕掛け、利徳はだまりて、損は親方にかづけ...」
[訳]:自分で商売を始め、利益は隠して、損は親方に責任を押し付け...