おくる/後る/遅る
このテキストでは、ラ行下二段活用の動詞「
おくる/後る/遅る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ラ行下二段活用
未然形 | おくれ |
連用形 | おくれ |
終止形 | おくる |
連体形 | おくるる |
已然形 | おくるれ |
命令形 | おくれよ |
■意味1:自動詞
遅れる、遅くなる。
[出典]:花宴 源氏物語
「遅れて咲く桜ニ木ぞいとおもしろき。」
[訳]:(見頃よりも)遅れて咲く二本の桜はとても趣深い。
■意味2:自動詞
取り残される、一緒に行けない、後に残る。
[出典]:大湊の泊 土佐日記
「行く先に立つ白波の声よりもおくれて泣かむ我や勝らむ」
[訳]:(あなた方が帰るために乗った)船が進む先に立つ白波の音よりも、後に残って泣く私の声の方が大きいことでしょう。
■意味3:自動詞
先立たれる、死に後れる。
[出典]:
若紫・北山の垣間見 源氏物語
「故姫君は、十ばかりにて殿に
後れ給ひしほど、いみじうものは思ひ知り給へりしぞかし。」
[訳]:亡くなった姫君は、十歳ぐらいで殿に
先立たれなさったときには、とても道理を理解していらっしゃったのですよ。
■意味4:自動詞
(性質や才能が)
物足りない、劣る、乏しい。
[出典]:
木の花は 枕草子
「愛敬
おくれたる人の顔などを見ては...」
[訳]:魅力が
乏しい人の顔などを見ては...
■意味5:自動詞
(髪が)
まだ伸びない。
[出典]:葵 源氏物語
「むげに後れたる筋のなきや...」
[訳]:まったくまだ伸びないでいる毛が(額に)ないのも...
■意味6:自動詞
気後れする。