まぎる/紛る
このテキストでは、ラ行下二段活用の動詞「
まぎる/紛る」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
ラ行下二段活用
未然形 | まぎれ |
連用形 | まぎれ |
終止形 | まぎる |
連体形 | まぎるる |
已然形 | まぎるれ |
命令形 | まぎれよ |
■意味1:自動詞
他のものに入り交じって区別がつかなくなる。
[出典]:蜻蛉日記
「紙の色にさへ紛れて、さらにえ見えたまへず。」
[訳]:紙の色にまで入り交じって区別がつかず、まったく見えません。
■意味2:自動詞
隠れて目立たなくする、隠れて密かに行動する、隠れる。
[出典]:
若紫・北山の垣間見 源氏物語
「日もいと長きにつれづれなれば、夕暮れのいたう霞みたるに
まぎれて、かの小柴垣のもとに立ち出で給ふ。」
[訳]:日もたいそう長く手持ち無沙汰なので、(光源氏は)夕暮れでひどく霞がかっているのに
隠れて、あの小柴垣の所に出て来なさいます。
■意味3:自動詞
他のことに心を奪われて忘れる。
[出典]:
ある者、子を法師になして 徒然草
「まづさしあたりたる目の前の事にのみ
まぎれて月日をおくれば、ことごとなすことなくして、身は老いぬ。」
[訳]:とりあえずさしあたって目の前のことにだけ
心を奪われて月日を過ごせば、すべてにおいて大成することなく、体は老いてしまいます。
■意味4:自動詞
取り込んでいる、忙しくて差し障りがある。
[出典]:戒文 平家物語
「出仕にまぎれ、政務にほだされ、驕慢の心のみふかくして...」
[訳]:役所務めに忙しく差し障りがあり、政務に縛られ、おごった気持ちばかりが強く...