あはす/合はす
このテキストでは、サ行下二段活用の動詞「
あはす/合はす」の意味、活用、解説とその使用例を記している。
サ行下二段活用
未然形 | あはせ |
連用形 | あはせ |
終止形 | あはす |
連体形 | あはする |
已然形 | あはすれ |
命令形 | あはせよ |
■意味1:他動詞
一つにする、合わせる。
[出典]:かぐや姫の昇天 竹取物語
「勅使、中将の高野のおほくにといふ人を指して、六衛の司あはせて、二千人の人を、竹取が家につかはす。」
[訳]: 勅使に、中将高野大国という人物を任命して、六衛の役所を合わせて二千人の人を、竹取の翁の家に派遣なさる。
■意味2:他動詞
結婚させる。
[出典]:
筒井筒 伊勢物語
「女はこの男をと思ひつつ、親の
あはすれども、聞かでなむありける。」
[訳]:女はこの男を(夫にしたい)と思い続け、親が(他の男と)
結婚させようとするのですが、それを聞き入れずにいました。
■意味3:他動詞
夢合わせをする。
夢合わせとは、見た夢の内容で吉凶を判断すること。
[出典]:うれしきもの 枕草子
「いかならむと思ふ夢を見て、おそろしと胸つぶるるに、ことにもあらず合はせなしたる、いとうれし。」
[訳]: どうだろうかと(不安に)思う夢を見て、恐ろしいと胸がつぶれるようなときに、(ある人が)たいしたことでもないと夢あわせをしてくれたのは、とても嬉しい。
■意味4:他動詞
釣り合わせる、適合させる。
[出典]:大進生昌が家に 枕草子
「...笑ひて、『家のほど身のほどにあはせてはべるなり。』といらふ。」
[訳]: 大進生昌は笑って、「家の大きさや身の程に釣り合わせて作っているのです。」と答える。
■意味5:他動詞
比べる、比べて優劣を競わせる。
[出典]:絵合 源氏物語
「竹取の翁に、宇津保の俊蔭をあはせて争ふ。」
[訳]:竹取の翁(の物語の絵)と、宇津保物語の俊蔭(の絵)を比べて優劣を競わせる。
■意味6:他動詞
楽器の調子を整える、合奏する。
[出典]:橋姫 源氏物語
「姫君に琵琶、 若君に箏の御琴、まだ幼けれど、常に合はせつつ習ひたまへば...」
[訳]: 姫君の琵琶、若君の箏の腕前は、まだ幼いが、いつも合奏しながらお習いになっているので...
■意味7:他動詞
(鷹狩で)
鷹を向かわせる。
■意味8:補助動詞
互いに〜する、一緒に〜する。
※この用法の場合、動詞の連用形につく。
[出典]:玉鬘 源氏物語
「語らひあはすべき人もなし。」
[訳]:一緒に親しく相談するような人もいない。