現代語訳(口語訳)
そこで、酒を飲んで大いに楽しみました。
船べりをたたいて歌いました。
歌に言うことには、
「桂の木でできた櫂と蘭の木でできた槳
水面に映った月影に櫂をさして(漕ぎ)、(波の中に)揺れる月光の中を遡りました
私の思いは果てしなく広がり
空の彼方にある月を望むのです」と。
客人の中に洞簫を吹く人がいて、歌に合わせてこれを吹きました。
その音色はむせび泣くようであり、怨むようで慕うようであり、泣くようで訴えかけてくるようでした。
余韻が細く長く続いて、細い糸のように途切れることがありませんでした。
(その音は)深い谷間に潜む蛟を踊らせ、舟に乗っている未亡人を泣かせるのでした。
つづき
単語解説
櫂、槳 | ともに舟を漕ぐ道具 |
空明 | 水面に映った月影 |
渺渺 | 遠く果てしなく広い様 |
美人 | 月を指す |
洞簫 | 尺八のような楽器 |
縷 | 細い糸 |
幽壑 | 深い谷間 |
蛟 | みずち。蛇に似ていて、角と四本の足があると言い伝えられる動物 |