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『人虎伝』(隴西李徴、皇族子〜)書き下し文・現代語訳(口語訳)と解説

著者名: 走るメロス
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『人虎伝・才を恃みて倨傲なり』

ここでは中国の説話集「唐人説会」におさめられている『人虎伝』の書き下し文、現代語訳(口語訳)とその解説を行っています。中島敦の短編小説「山月記」はこの話を元に書かれていますが内容が違いますので注意してください。

原文(白文)

隴西李徴、皇族子。
家於虢略。
徴少博学、善属文。
弱冠従州府貢、焉時号名士。
天宝十五載春、於尚書右丞楊元榜下、登進士第。
後数年、調補江南尉。
疎逸、恃才倨傲
不能屈跡卑僚。
嘗鬱鬱不楽。
毎同舎会、既酣、顧謂其群官曰、
「生乃与君等為伍耶。」


其寮友咸側目之。
及謝秩、則退帰間適、不与人通者、近歳余。
後迫衣食、乃東遊呉楚間、以干郡国長吏。
徴在呉楚、且歳余、所獲饋遺甚多。
西帰虢略、未至。
舎於汝墳逆旅中、忽被疾発狂。
鞭捶僕者。
不勝其苦。
是於旬余、疾益甚。
無何夜狂走、莫知其適。

書き下し文

隴西の李徴は、皇族の子なり。
虢略(かりゃく)に家す。
徴、少(わか)くして博学、善く文を属(しょく)す。
弱冠にして州府貢にひ、時に名士と号す。
天宝十五載の春、尚書右丞楊元の榜下(ぼうか)に於いて、進士の第に登る。
後数年、江南の尉に調補せらる。
徴性疎逸にして、才を恃(たの)みて(きょごう)なり。
跡を卑僚(ひりょう)に屈する能はず。
嘗(つね)に鬱鬱として楽しまず。
同舎に会する毎(ごと)に、既に酣(たけなわ)にして、顧みて其の群官に謂ひて曰はく、
「生(われ)乃ち君等と伍を為さんや。」と。


其の寮友咸(みな)之を側目す。
謝秩に及べば、則ち退き帰りて間適し、人と通ぜざる者(こと)、歳余に近し。
後衣食に迫られ、乃ち東のかた呉楚の間に遊び、以て郡国の長吏(ちょうり)に干(もと)む。
徴呉楚に在りて、且(まさ)に歳余ならんとす、獲(う)る所の饋遺甚だ多し。
西のかた虢略(かんりゃく)に帰らんとして、未だ至らず。
汝墳の逆旅の中に舎り、忽ち疾を被りて発狂す。
僕者(ぼくしゃ)を鞭捶(べんすい)す。
其の苦しみに勝へず。
是(ここ)に於いて旬余にして、疾(やまい)益(ますます)甚だし。
何(いくばく)も無く夜狂走し、其の適(ゆ)くところを知る莫し。

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『教科書 高等学校 古典B 漢文編』 三省堂
鎌田正、米山寅太郎 著 2011 『新漢語林 第二版』大修館書店

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