原文(白文)
臨邛道士
鴻都客
能以精誠致魂魄
為感君王展転思
遂教方士
殷勤覓
排空
馭気奔如電
昇天入地求之
遍
上窮
碧落下黄泉
両処茫茫皆不見
忽聞海上有仙山
山在
虚無縹緲間
楼閣
玲瓏五雲起
其中綽約多仙子
中有一人字太真
雪膚花貌参差是
つづき
「金闕西廂叩玉扃〜」書き下し文・現代語訳と解説
■書き下し文
臨邛(りんきょう)の道士鴻都(こうと)の客
能く精誠を以て魂魄(こんぱく)を致す
君王展転の思ひに感ずるが為に
遂に方士をして殷勤(いんぎん)に覓(もと)めしむ
空を排し気を馭(ぎょ)して奔(はし)ること電(いなづま)のごとく
天に昇り地に入りて之を求むること遍(あまね)し
上は碧落(へきらく)を窮め下(しも)は黄泉(こうせん)
両処茫茫(ぼうぼう)として皆見へず
忽(たちま)ち聞く海上に仙山有りと
山は虚無縹緲(ひょうびょう)の間に在り
楼閣玲瓏(れいろう)として五雲起こり
其の中(うち)綽約(しゃくやく)として仙子多し
中に一人有り字(あざな)は太真(たいしん)
雪膚花貌(かぼう)参差(しんし)として是れなり
つづき
「金闕西廂叩玉扃〜」書き下し文・現代語訳と解説
■現代語訳
臨邛の道士が長安に旅人として訪れていました。
(道士は)真心を込めた念力で、魂を招き寄せることができるといいます。
(側近たちは)皇帝の、安らかに眠れないほどの(彼女への)思いを感じたために
その道士に、(彼女の魂を)ねんごろに探し求めさせました。
空をかき分け、大気に乗って、駆けることは稲妻のようであり、
天に昇り地にもぐって彼女の魂を満遍なく探しました。
上は大空の果てまで、下は地下の黄泉の世界まで(探しましたが)
どちらも(大空も黄泉も)果てしなく広がっていて(彼女の姿は)見つかりませんでした。
にわかに聞いたところによると、海上に仙人が住んでいる山があるそうです。
その山は何物もなく、遠くはっきりと見えない所にあります。
楼閣はすっきりと澄んで美しく、五色の雲がわき起こっており、
その中には、美しい仙女がたくさんいました。
(仙女の)中に一人、名を太真という者がいました。
雪のように白く美しい肌、花のような美貌は(彼女に)そっくりです。
つづき
「金闕西廂叩玉扃〜」書き下し文・現代語訳と解説
■単語解説
| 鴻都 | 長安のこと |
| 殷勤 | ねんごろである |
| 馭 | 馬などを上手に操る |
| 遍 | 満遍なく |
| 碧落 | 大空、遠い所、果て |
| 忽 | にわかに、急に |
| 虚無縹緲 | 何物もなく、遠くはっきりと見えない |
| 玲瓏 | すっきりと澄んで美しい様 |
| 綽約 | 姿がおしとやかで美しい様 |
| 参差 | もともと「ふぞろいである」という意味だが、転じて「おおよそ似ている」の意味 |
■押韻
「客、魄、覓」、「電、遍、、見」、「山と間」、「起、子、是」がそれぞれ韻を踏んでいます。
著者情報:走るメロスはこんな人
学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。