史記『刎頸之交』
このテキストでは、
史記の一節『
刎頸之交』の「於是、舎人相与諫曰〜」から始まる部分の原文(白文)、書き下し文、現代語訳(口語訳)とその解説を記しています。
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史記『刎頸之交・刎頚の交わり』(既罷帰国〜)の現代語訳・書き下し文と解説
白文(原文)
於是、
舎人相与諫曰、
「臣所以去親戚而事君者、徒慕君之高義也。
今君与廉頗同列、廉君宣悪言、而君畏匿之、恐懼殊甚。
且庸人尚羞之。
況於将相乎。
臣等不肖。
請辞去。」
藺相如固止之曰、
「公之視廉将軍、孰与秦王。」
曰、
「不若也。」
相如曰、
「夫以秦王之威、而相如廷叱之、辱其群臣。
相如雖駑、独畏廉将軍哉。
顧吾念之、彊秦之所以不敢加兵於趙者、徒以吾両人在也。
今両虎共闘、其勢不俱生。
吾所以為此者、先国家之急、而後私讎也。」
廉頗聞之、
肉袒負荊、因賓客、至藺相如門、謝罪曰、
「鄙賤之人、不知将軍寛之至此也。」
卒相与
驩為刎頸之交。
書き下し文
於是、舎人相与諫曰、
是(ここ)に於ひて、舎人相与(とも)に諫(いさ)めて曰はく、
「臣所以去親戚而事君者、徒慕君之高義也。
「臣の親戚を去りて君に事(つか)ふる所以の者は、徒(た)だ君の高義を慕へばなり。
今君与廉頗同列、廉君宣悪言、而君畏匿之、恐懼殊甚。
今君廉頗と列を同じくし、廉君悪言を宣(の)ぶれば、君畏れて之に匿れ、恐懼(きようく)すること殊(こと)に甚だし。
且庸人尚羞之。
且つ庸人すら尚ほ之を羞づ。
況於将相乎。
況(いは)んや将相に於いてをや。
臣等不肖。
臣等不肖なり。
請辞去。」
請ふ辞し去らん。」と。
藺相如固止之曰、
藺相如固く之を止めて曰はく、
「公之視廉将軍、孰与秦王。」
「公の廉将軍を視ること、秦王に孰与(いず)れぞ。」と。
曰、
曰はく、
「不若也。」
「若(し)かざるなり。」と。
相如曰、
相如曰はく、
「夫以秦王之威、而相如廷叱之、辱其群臣。
「夫(そ)れ秦王の威を以てしても、相如之を廷叱(ていしつ)して、其の群臣を辱む。
相如雖駑、独畏廉将軍哉。
相如駑(ど)なりと雖(いへど)も、独り廉将軍を畏れんや。
顧吾念之、彊秦之所以不敢加兵於趙者、徒以吾両人在也。
顧(た)だ吾之を念(おも)ふに、彊秦(きょうしん)の敢へて兵を趙に加へざる所以の者は、徒だ吾が両人の在るを以てなり。
今両虎共闘、其勢不俱生。
今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱(とも)には生きざらん。
吾所以為此者、先国家之急、而後私讎也。」
吾の此(これ)を為す所以の者は、国家の急を先にして、私讎(ししゅう)を後にするを以てなり。」と。
廉頗聞之、肉袒負荊、因賓客、至藺相如門、謝罪曰、
廉頗之を聞き、肉袒(にくたん)して荊を負ひ、賓客(ひんかく)に因りて、藺相如の門に至り、罪を謝して曰はく、
「鄙賤之人、不知将軍寛之至此也。」
「鄙賤(ひせん)の人、将軍の寛なることの此(ここ)に至るを知らざりしなり。」と。
卒相与驩為刎頸之交。
卒(つひ)に相与に驩(よろこ)びて刎頸(ふんけい)の交はりを為す。
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【物理基礎「加速度を使った、速度・時間・距離に関する法則・公式」について解説】