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枕草子『すさまじきもの(除目に司えぬ人の家〜)』のわかりやすい現代語訳と内容

著者名: 走るメロス
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枕草子『すさまじきもの』原文・現代語訳と解説

このテキストでは、枕草子の一節『すさまじきもの』(除目に司えぬ人の家〜)のわかりやすい現代語訳・口語訳とその解説を記しています。




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枕草子『すさまじきもの』(験者の、物の怪調ずとて〜)の現代語訳


枕草子とは

枕草子清少納言によって書かれたとされる随筆です。清少納言は平安時代中期の作家・歌人で、一条天皇の皇后であった中宮定子に仕えました。ちなみに枕草子は、兼好法師の『徒然草』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。


原文(本文)

除目得ぬ人の家。今年は必ずと聞きて、はやうありし者どもの、ほかほかなりつる、田舎だちたる所に住む者どもなど、みなあつまり来て、出入る車の轅もひまなく見え、もの詣でする供に、我も我もと参りつかうまつり、物食ひ酒飲み、ののしりあへるに、はつる暁まで門たたく音もせず、あやしうなど、耳たてて聞けば、前駆追ふ声々などして、上達部などみな出で給ひぬ。



もの聞きに宵より寒がりわななきをりける下衆男、いともの憂げに歩み来るを見る者どもは、え問ひだにも問はず、ほかより来たる者などぞ、
「殿は何にかならせ給ひたる。」

など問ふに、いらへには

「何の前司にこそは。」


などぞ、必ずいらふる。まことに頼みける者は、いと嘆かしと思へり。つとめてになりて、ひまなくをりつる者ども、一人二人すべり出でて去ぬ。古き者どもの、さもえ行き離るまじきは、来年の国々、手をおりてうち数へなどして、ゆるぎ歩きたるも、いとをかしうすさまじげなる。



現代語訳(口語訳)

官職任命の儀式に官職を得ない人の家(は興ざめています)。今年は必ず(官職を得ることができるだろう)と聞いて、かつてこの家にいた者たちで、今は散り散りだった人々、田舎じみたところに住む人々が皆集まってきて、(この家に)出入りする牛車の轅も隙間なく見えています。(官職に任命されるよう、家の主が)お参りに行く供に、私も私もと参上申し上げ、物を食い酒を飲み、騒ぎあっていましたが、(任命式が)終わる明け方まで、(使者が)門をたたく音もしません。



おかしいなと思って、耳をたてて聞いてみると、先払いする人の声がして、上達部の方々は皆(任命式のあった宮中から)退出なさいました。話を聞くために前の晩から寒がってふるえ(ながら外で様子を探って)ていた下人が、とても憂鬱そうに歩いてやってくる様子を見る人々は、(任命されたかどうかを)伺うことができずにいます。(その場に初めからいなく)よそから来た者は、

「殿はなんの位になられましたか。」


と尋ねると、その返事に

「どこそこの前の国司です。」


と必ず答えます。



(家の主が役職に任命されることを)本当に頼みにしていた者は、大変嘆かわしいことだと思っています。早朝になって、隙間なくい合わせていた者たちは、一人二人こっそりと退出していきます。古くから仕えている者、そんな風に(その場を)離れることができそうもない人々は、来年の(国司が交代する)国の数を、指を折って数えたりなどしています。体をゆすって歩いていた者たちも、とても滑稽で興ざめなものです。

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佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
ベネッセ全訳古語辞典 改訂版 Benesse
『教科書 精選古典B 』三省堂
全訳読解古語辞典 第四版 三省堂

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