むねつぶるる物
むねつぶるる物。競馬(くらべうま)みる。
元結(もとゆひ)よる。
おやなどの心地あしとて、例ならぬけしきなる。
まして世の中などさわがしと聞こゆるころは、よろづのことおぼえず。
また、ものいはぬちごの泣き入りて、乳ものまず、乳母(めのと)のいだくにもやまで久しき。
例の所ならぬ所にて、ことにまたいちじるからぬ人の声聞きつけたるはことわり、こと人などの、そのうへなどいふにも、まづこそつぶるれ。
いみじうにくき人のきたるにも、またつぶる。
あやしくつぶれがちなるものは、胸こそあれ。
よべきはじめたる人の、今朝の文のをそきは、人のためさへつぶる。