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枕草子 原文全集「池は」

著者名: 古典愛好家
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池は

池は、かつまたの池。いはれの池。にゑのの池。初瀬(はつせ)に詣でしに、水鳥のひまなくゐてたちさわぎしがいとをかしう見えしなり。

水なしの池こそ、あやしうなどてつけけるならむとて問ひしかば、「五月など、すべて雨いとう降らむとする年は、この池に水といふものなむなくなる。また、いみじう照るべき年は、春のはじめに水なむ多くいづる」と言ひしを、「無下になく乾きてあらばこそさも言はめ、いづる折もあるを、一すじにもつけけるかな」といはまほしかりしか。

さるさはの池は、うねべの身なげたるを聞しめして、行幸などありけむこそ、いみじうめでたけれ。寝くたれ髪をと、人丸(人麿)が詠みけむ程など思ふに、言ふもおろかなり。

おまへの池、また、何の心にてつけけるならむとゆかし。かがみの池。さ山の池は、三稜草(みくり)と言ふ歌のをかしきがおぼゆるならむ。

こひぬまの池。はらの池は、「玉藻なかりそ」と言ひたるもをかしうおぼゆ。



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・枕草子 原文全集「池は」

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松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 上」 新潮社

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