山は
山は、おぐら山。かせ山。三笠山。このくれ山。いりたちの山。わすれずの山。すゑの松山。かたさり山こそ、いかならむとをかしけれ。
いつはた山。かへる山。のちせの山。あさくら山、よそに見るぞをかしき。おほひれ山も、をかし。臨時の祭の舞人などの、思ひ出(いで)らるるなるべし。
三輪の山をかし。たむけ山。まちかね山。たまさか山。みみなし山。
市は
市は、たつの市。さとの市。つば市。
大和にあまたある中に、長谷にまうずる人のかならずそこにとまるは、観音(くわんおん)の縁のあるにやと、心ことなり。
をふさの市。しかまの市。あすかの市。
峰は
峰は、ゆづるはの峰。阿弥陀の峰。いやたかの峰。
原は
原は、みかの原。あしたの原。その原。
淵は
かしこ淵は、いかなる底の心を見て、さる名を付けんとをかし。
ないりその淵。
たれにいかなる人のをしへけん。
あを色の淵こそおかしけれ。
蔵人などの具にしつべくて。
かくれの淵。いな淵。
海は
海は、水海。よさの海。かはぐちの海。いせの海。
陵は
陵(みささぎ)は、うぐひすの陵。かしはばらの陵。雨の陵。
渡は
渡(わたり)は、しかすがの渡。こりずまの渡。水はしの渡。
たちは
たちは、たまつくり。
家は
家は、近衛のみかど。二条わたり。一条もよし。
染殿のみや。清和院(せかい)。菅原の院。冷泉(れんせい)院。閑院。朱雀院。小野の宮。紅梅。県の井戸。東三条。小六条。小一条。