命題の対偶
この命題の
対偶は、「
」でした。そして対偶が真ならばもとの命題も真、対偶が偽ならばもとの命題も偽となる性質がありましたね。
この対偶の性質を利用して、命題が真(偽)であることを証明する問題についてみていきましょう。「
対偶が真なので与えられた命題は真だよ」という流れで証明をしていきます。
問題 整数nについて、対偶を利用して次の命題を証明しましょう。
n²が5の倍数のとき、nが5の倍数である
まず命題を整理します。説明をしやすくするために、「n²が5の倍数」を条件p、「nが5の倍数」を条件qqとしましょう。つまりこの命題は、「p⇒q」となりますね。この命題を証明するために命題と対偶の関係を利用します。つまり「p⇒q」の対偶「
」が正しいかをチェックするということです。
nが5の倍数の否定
まず
をきちんと把握しましょう。
nが5の倍数ではないを文字式におこしてみます。整数kを用いて
n=5k+1
n=5k+2
n=5k+3
n=5k+4
の4通りが考えられます。
対偶を用いた証明の問題ですが、ここが一番のポイントかもしれません。ではそれぞれの場合で考えて見ましょう。
■n=5k+1のとき
"n=5k+1"のときn²は
n²
=(5k+1)²
=25k²+10k+1
=5(5k²+2k)+1
kが整数なので、"(5k²+2k)"もまた整数となります。また、"5(5k²+2k)"は5の倍数なのでこのことから、"5(5k²+2k)+1"は5の倍数ではないことがわかりますね。
■n=5k+2のとき
"n=5k+2"のときn²は
n²
=(5k+2)²
=25k²+20k+4
=5(5k²+4k)+4
kが整数なので、"(5k²+4k)"もまた整数となります。また、"5(5k²+4k)"は5の倍数なのでこのことから、"5(5k²+4k)+4"は5の倍数ではないことがわかります。
■n=5k+3のとき
"n=5k+3"のときn²は
n²
=(5k+3)²
=25k²+30k+9
=5(5k²+6k)+9
kが整数なので、"(5k²+6k)"もまた整数となります。また、"5(5k²+6k)"は5の倍数なのでこのことから、"5(5k²+6k)+9"は5の倍数ではないことがわかります。
■n=5k+4のとき
"n=5k+4"のときn²は
n²
=(5k+4)²
=25k²+40k+16
=5(5k²+8k)+16
kが整数なので、"(5k²+8k)"もまた整数となります。また、"5(5k²+8k)"は5の倍数なのでこのことから、"5(5k²+8k)+16"は5の倍数ではないことがわかります。
以上のことから、「nが5の倍数でないとき、n²は5の倍数ではない」ことがわかりました。
命題の対偶「
」がつねに成り立つことがわかったので、もとの命題である「n²が5の倍数のとき、nが5の倍数である」が証明されたことになります。